今回の会議では、米国や日本をはじめとする20カ国の政府が二酸化炭素(CO2)を排出しないクリーンな次世代エネルギー技術の開発を促す「ミッション・イノベーション」を発足すると発表しており、同ファンドは今後、これら各国と協力していく方針だ。
ファンドには、アリババ・グループのジャック・マー会長、LinkedInのリード・ホフマン会長、ヒューレット・パッカードのメグ・ホイットマンCEO、Amazonのジェフ・ベゾスCEO、ブリッジウォーター・アソシエーツのレイ・ダリオ最高投資責任者(CIO)、ベンチャー投資家ビノッド・コースラ、ベンチャーキャピタルKPCBのパートナーであるジョン・ドーア、著名投資家のジョン・ソロスやトム・ステイヤーなどが名を連ねている。
再生可能エネ関連銘柄が上昇
これらの発表を受け、上場投資信託(ETF)のグッゲンハイム・ソーラー(TAN)とパワーシェアーズ・ワイルダーヒル・クリーンエナジー(PBW)、ファーストトラストNASDAQクリーンエッジ・グリーンエナジー(QCLN)の基準価額は12月1日、米国の代表的な株価指数S&P 500の上げ幅を大きく上回る上昇をみせた。
再生可能エネルギー関連のETFはここ1年、トータルリターンがおよそ5~24%減少していた。ただ、再生可能エネルギーが総発電量に占める割合はまだわずかであり、この業界にはその他のどの業種よりも大きな成長潜在力があると見込まれている。
太陽光発電には負の側面も
太陽光をはじめとするクリーンエネルギー分野への投資には、軽視できない数多くのリスクが伴う。関連銘柄の株価の上昇率はここ5年ほど、市場平均を大幅に下回っている。金融危機の発生前の最高値を回復できていない数少ない業種の一つなのだ。
太陽光発電の生産コストは2008年のピーク時以降、中国による太陽電池の供給過多と価格の下落によって大幅に低下した。それでも中国の銀行は、その後も本来なら破産しているはずの関連企業に融資を続けている。
一方、コストは大幅に減少したものの、化石燃料に比べればまだまだ高いのが現状だ。米国では特に、水圧破砕工法が広く普及したことから化石燃料を使用する電力の生産コストはここ2年で大きく下落している。また、投資信託の格付け評価や金融・経済情報を提供するモーニングスターによれば、世界の電力需要は中国、日本、ドイツ、米国の4ヵ国がその大半を占めており、世界中の発電施設の70%が、これら4カ国に集中している。
このほか、太陽光発電市場の成長は期間限定の政府の補助金制度に大きく依存している。米国では現在、住宅・商業施設ともに太陽光発電システムの設置費用の30%について税額控除を受けることができるが、この制度は2016年末で終了する予定。これが、同国の太陽市場の先行きに不透明感をもたらしていると指摘される。
英国政府もまた、COP21の開催を前に再生可能エネルギーを対象とする税額控除制度の大幅な規模縮小を発表した。2020年までに、自立した市場にさせることを目指す考えだという。さらに、ドイツとイタリアも補助金を削減する計画だ。
一方、昨年の世界の電力需要のうち、約20%を占めた日本は今後も需要が増える見通しであり、新たな太陽光バブルに拍車をかける可能性がある。ただし、日本政府も同様に、補助金制度は規模を縮小する方針だ。