先日、決済関係の事業を行うスクエアの株式が公開価格9ドルで新規上場し、株価は一時50%以上値上がりした。スクエアの株式は午前10時10分過ぎに11.20ドルで寄り付き、その後1時間ほどで13.60ドルを超える水準まで値を上げた。
その時点で同社の時価総額は45億ドルを超え、上場前に、スクエアとツイッターという二つの会社のCEOを務められるのかという質問に直面していたドーシーにとっては、自身の正しさを証明したことになる。スクエアの株式上場にあたっては、投資家の買い需要が弱く、公開価格も予想レンジを大きく下回る価格となるなど、上場直前に慌ただしい1週間を送っただけに、いいスタートを切った形になった。
自身の持株の時価が14億ドルとなったドーシー氏は、フォーブスの取材に対してホッとした表情を見せていましたが、この上場は同社にとって一つの節目に過ぎず、最終目的地でないことは確かです。
母親のマルシア・ドーシーが取引所の取引開始の鐘を鳴らした数時間後、彼は、「これは始まりに過ぎない。調達した資金は加盟店用のツールの開発を続けるために使う」と発言した。
スクエアの上場は今後の市場を占うバロメーターと目されていたが、今回の堂々たるお披露目は、企業価値が10億ドルを超えると評価されている未上場IT企業、すなわち「ユニコーン」と呼ばれる企業に、株式公開が最終ゴールではないことを教えてくれる。スクエア、Tinderを展開するMatch Group、そしてEメールのセキュリティ事業を手がけるMimecastの3社が同じ日に株式を上場したが、今週木曜までの新規公開が20社に止まるなど、2015年はIT企業にとってややスローな年であった。
しかしドーシー氏は、スクエアの上場が市場や業界に与えるマクロ的な影響については心配していないようだ。
「ユニコーンがよく話題になりますが、ユニコーンは想像上の生き物です!それに、私はエコノミストではありません」と彼は言う。
スクエアの上場初日はうまくいったと言えるかもしれないが、しかし上場前の1週間はそうでもなかった。公開価格が9ドルに決まったことで、同社は潜在的な利益を放棄することになっただけでなく、ラチェット条項が発動されたため、最終段階で参加してきた投資家に対して追加で株式を付与することになった。これらの投資家は、一定の収益が保証されるという条件で投資していたため、公開価格が低く決まったことから、1,030万株の株式を追加で受取ることになったのだ。これは他の投資家の持分の希薄化を招く結果となった。
スクエアの上場初日は確かにうまく行ったが、ドーシー氏は過去の経験から上場日の株価に一喜一憂すべきではないことを知っている。2年前、彼が最初に立ち上げたツイッターがニューヨーク証券取引所に上場した際、上場初日の終値は公開価格の26ドルを72%も上回るものであった。しかし、ツイッターが再び輝きを取り戻す為に、先月ドーシー氏が常任CEOとして返り咲いたものの、株価はその時の高値を超えられないでいる。
スクエアに関しては、ドーシー氏は、上場以降も会社の勢いと信頼を保つことが自分の役割であると認識している。その一例として、取引先がスクエア株を公開価格で買えるプログラムを用意したところ、「びっくりするほどの参加」があったそうで、これは顧客がスクエアの将来性を信じている証左と言える。
上場についてもドーシー氏は、「上場によって我々のスピードが落ちることはない。むしろ企業としての我々を勢い付かせてくれるものであり、今こそ我々は外に向かって発信すべきだ」と語っている。
ドーシー氏は、上場後はまた商品開発に取り組み、中でも同社の新製品Apple Payと近距離無線通信で作動するクレジットカード読取機に注力したいと言っている。同社ではすでに、同機に対する350,000件の事前注文を受けているが、これは携帯電話やEMV仕様のクレジットカードから加盟店が支払いを受けることができるようにするものである。秋には発売される予定であったが、ドーシー氏によれば、今年中には出荷の予定だそうだ。
ドーシー氏は、「完璧な形で経験していただくため」と説明している。