しかし、その変化は筆者の想像以上に早くやってきそうだ。ニュースサイト9to5Macが報じたところによると、次期iPhone 7でアップルはヘッドフォン端子を廃止するという。これにより、次期モデルはiPhone 6Sよりも1ミリ以上薄くなり、史上最も薄いiPhoneになる。
次期モデルに付属する純正イヤホンEarPodsはライトニング端子を用いて接続され、内部に極小のデジタル-アナログ変換コンバータが内蔵される。このことは、今後、ヘッドフォンメーカーらは従来のピンジャックに加え、ライトニングアダプターを同梱して発売する、もしくは、MFi 認証を取得し、ライトニング接続限定のヘッドフォンを発売する必要に迫られると推測できる。
この動きはアップルの収益性を考えた場合、非常に妥当なものと思える。ライトニング端子を標準化することにより、アップルは周辺アクセサリーの支配権を完全に握ることになる。ここから生まれるライセンス収入は膨大なものになるだろう。さらに、iPhoneとデジタル接続するスマート・イヤホンやスマート・ヘッドフォンといった新たな製品カテゴリが生まれ、それに対応する新たなアプリも誕生するだろう。
そして、最も重要なことはライトニング対応のヘッドフォンを通じ、アップルは彼らのエコシステムをさらに強固なものに仕上げることになるということだ。
この動きにはもちろん、ユーザーからの反発も予想されるが、ライトニング接続を好まないユーザーは従来のブルートゥース接続のヘッドフォンを選ぶことも可能だ。アップルはAirPlay機能をアップグレードし、従来よりもハイクオリティな音質でブルートゥース経由のサウンドを楽しめるようになるかもしれない。
3.5ミリのヘッドフォン端子(専門用語ではTRSコネクターと呼ぶ)の歴史は意外に古く、そのルーツは1878年に電話交換機用に開発されたデバイスに遡る。おそらく今日のテクノロジー業界で最も広範囲に適用された技術の一つと言えるだろう。
アップルがやろうとしていることは、多くの人が大金を注いで購入した高価なヘッドフォンやイヤホンを、使えないものにしてしまう行為だ。現状のiPhoneは多くのユーザーにとって、十分薄いものだと思うが、アップルはこれを「さらに1ミリ薄くする」という目的のために実行に移す。もちろん、変換アダプタを使用して、古いヘッドフォンを使い続ける選択もあるが、これはかなりイライラさせられるものになるだろう。
しかし、そんな筆者の主観を除いて考えても「音楽を聞いている時に充電はどうするんだ?」という疑問は浮かぶ。もしかしたら、このタイミングでアップルはiPhoneにワイヤレス充電機能を導入するのかもしれない。そうだとしたら、これはパーフェクトなタイミングと言えるだろう。
もしも、アップルが次期iPhoneにスムーズなワイヤレス充電機能を搭載すれば、彼らの強欲さに反感を持つ人たちも、その便利さに屈服せざるを得ないかもしれない。