米アップアニーの“策”とは。
いまや世界12カ国にオフィスを構え、400人の社員を抱えるまで成長した、スマートフォンのアプリの市場データを提供する調査・分析会社のアップアニー。昨年には、ライバル企業のオランダ・ディスティモ社を買収し、「向かうところ、敵なし」のスタートアップである。
なぜ、同社は2010年の設立から5年で、上位100位のアプリパブリッシャーの9割以上が利用する世界ナンバー1のアプリ調査会社になれたのか。
「明確なビジョンを組み立て、貫くこと」―そう原理原則論を話すのは、創業者のバートランド・シュミットだ。設立前からアプリ市場の可能性に期待し、当初からグローバル市場を視野に入れて、国際的スタートアップづくりを行ったことが、企業の成長を加速させたという。
同社の創業は中国だが、初期段階から多様な国籍の社員を採用した。その方針から、中国はもちろん、シュミットの母国フランスがある欧州、米国、アジアの国籍を持つ人たちも積極的に仲間になっていった。そうした多様な“背景”を持つ人たちを集めた企業づくりが功を奏したという。
現在では製品開発のほとんどを中国、製品マネジメントをサンフランシスコ、そして12カ国でのローカル事業を各オフィスで行うまで成長した。いずれも多様性はもちろん重視しているが、優秀なローカル人材を雇うことでその国独特の文化に対応できるようにしている。
「これが企業の信頼性に貢献し、国際化を支えた重要な要因だ」とシュミットは語る。
ビジネスモデルという観点では、フリーミアム・モデル(サービスの一部を無料で提供し、その他を有料化するモデル)とM&A(企業の買収・合併)を意識したという。フリーミアム・モデルを導入することにより、サービスの透明性と信頼度を高めた。
また、このビジネスモデルを支えるために資金調達を行い、総額9,400万ドル(約116億円)を集めた。そして、積極的かつ慎重に信頼できる企業を探しながら、戦略的に企業を買収してきた。
著しい成長を遂げている企業の文化を維持するのは難しいのではないか―。
「社内でのコミュニケーションをとても大事にしている。共通言語を英語にし、積極的に話をする文化をつくる、そんなことは当たり前だよ。むしろ、社員を必要な場所に、国をまたいでも適材適所、移動させた。それに伴って必要となったテレビ電話も惜しみなく投資をしたよ。それにより問題をいち早く発見できた」