そうした作品は鑑賞には良いかもしれないが、たとえ意図していなくても、心理学やメンタルヘルスに対する誤った考えを観客にもたらしかねない。フィクションに着想を与えた真実を知れば、必ずしもエンターテインメントが現実と一致していないことがわかるだろう。
1. 『17歳のカルテ(Girl, Interrupted)』1999年
『17歳のカルテ』は、スザンナ・ケイセンの自伝を映画化したもので、1960年代に境界性パーソナリティ障害(BPD)と診断された彼女の体験と、精神科病院での入院生活を詳しく描いている。映画はメンタルヘルスと自己発見に関する重要なテーマを扱っている一方で、BPDがどんな病気で、どのように治療の効果が現れるのかを誤って伝えることで、この病気に対する美化された誤解を招きかねないものになっている。作品ではBPDによく見られる幅広い症状を紹介することなく、衝動性と性的行動というこの病気のよりドラマチックで注目を集める側面に焦点を当てている。実際には、BPDは『17歳のカルテ』で描かれるよりもはるかに多くの症状で特徴づけられることを研究が示している。
・放棄への強い恐怖
・同一性障害
・極端な感情起伏
・激しく不安定な対人関係
・慢性的な空虚感
・自殺の願望と自殺行為
しかしこの映画は、こうした注目されにくい症状を軽く扱い、観客にとって魅力的で胸躍らせる瞬間ばかりを強調している。この種の表現方法は、BPDとその複雑さに対する誤った理解につながりかねない。
さらに、『17歳のカルテ』は奇跡的な回復が比較的短い期間に可能であることを示唆している。映画の最後では、スザンナ・ケイセンが平穏、冷静で、感情をコントロールできているように見える。しかし、BPDからの真の回復には、治療、投薬および一貫したセルフケアへの長期的な取り組みが必要で、何年もかかることも多く、そこで初めて症状が徐々に軽減されていく。