3. 『レインマン(Rain Man)』1988年
『レインマン』は、自閉症への認識を高め、この病気に対する偏見を軽減することに著しく貢献した画期的な作品だ。ダスティン・ホフマンが自閉症サバン(特異な才能をもつ自閉症者)のレイモンド・バビットを演じるこの映画は、自閉症をもつ人々とその家族が直面する課題に人々の関心を向けさせた。自閉症患者が卓越した数学的才能とその他のサバンの能力をもつという設定は、この映画以降、自閉症に関連付けられている固定観念を生み出した。サバン症候群の能力を誇張した描写は、自閉症をもつ人たちに対するさまざまな非現実的な期待につながり、すべての自閉症者が稀有な能力を持つという誤った考えを助長した。
サバン症候群は、発達障害をもつ人が特定の分野(数学や音楽など)で得意な才能を見せる実際に稀な症状であり、自閉症者にありふれているというにはほど遠いことを研究が示している。サバン症候群は、自閉症に特有というわけでもなく、他の発達障害をもつさまざまな人にも見られる。こうした状況を踏まえると、レインマンは、自閉症スペクトラム障害をもつことや、サバンであることの意味の偏狭な考えを広めることに寄与したといえる。
『レインマン』はすばらしい作品だが、誤った二分法を無意識のうちに助長し、自閉症をもつ人たちが卓越した能力をもつサバンか、「低機能」でまったく社交性がないかのどちらかであるという、恒久的で有害かつ無神経なステレオタイプを観客が信じるように仕向けた。
現実には、自閉症をもつ人の大多数がどちらのカテゴリーにも属さず、意義のある生活、キャリア、対人関係をまっとうしており、それはステレオタイプに分類された人たちも同様だ。『レインマン』に見られるような描写が、自閉症スペクトラム障害の人たちが長年にわたって見せてきた多様な能力と行動に影を落とすことになりかねないのは残念なことだ。
(forbes.com 原文)