世界経済フォーラムのジェンダー・ギャップ指数ランキングで常に上位を占め、企業内の女性役員比率が3割に迫る女性社会進出先進国、フィンランド。福祉国家としても名高いこの北欧の国で社会政策を研究する傍ら、 現地グローバル企業のNo.2として働く日本人女性が語る、女性活躍のヒントとは?
私は2007年、早稲田大学大学院で、フィンランドの社会政策についての研究に没頭していました。ところが、研究資料を求めて訪れた北の国の小さな首都で、まったく異なるジャンルから突然のオファーを受けました。 スマートフォンや タブレット端末、ノートPCなど電子機器専用のガジェットバッグ・ブランド「Golla (ゴッラ)」のCEOペトリ・カハコネンから、日本マーケットの責任者として働いてみないか、と誘われたのです。「Golla」はフィンランドのナショナル・ブランド「Nokia」との協力体制で大きくなった新進気鋭のブランドで、当時はiPhoneやiPadなど世界同時に発売される新しいガジェットに対応したデザイン性の高いバッグを開発し、毎年約150%の成長を続けるベンチャ―・カンパニーでした。学生であること、ビジネス経験がないことを理由に断ろうと思いましたが、雰囲気、感性で合うものを感じ、学術活動との両立を条件に、アルバイトという雇用形態からスタートしました。フィンランド社会の実態に迫れるのもよい経験かもしれないと思いましたし、最終的には「おもしろそう!」という好奇心が原動力になりました。
渋谷のシェア・オフィスからスタートし、1人で日本のマーケットを調査、開拓しました。 やがて大手家電量販店や携帯電話会社との大きな契約が取れ、オフィスもショールーム をかねて表参道の路面ビル1Fに移し、人も雇い入れることができました。本社からヴァイス・プレジデントの内示を受けたのは、ビジネスも安定期に入った2012年のことです。もちろん、驚きましたが、経営に関わる仕事なんてめったにできるものではない、NOという選択肢はないと思い、承諾しました。
現在はアジア、ヨーロッパ、ロシア、北米、中東 などインターナショナル・マーケットの営業 統括および戦略づくりに携わり、CEOと各国の支社、クライアントとの橋渡し役として、世界の国々へ出張に飛び回る毎日です。グローバル企業の中で日本人女性である私が貢献できることは、コーディネート能力、スピード力、複雑な事象への対応だと思います。また日本市場は比較的スケールが大きくかつ複雑なので、それをこなした経験があることで、いち早く他のマーケットの特徴を把握できるという利点にも気がつきました。しかし、異なる文化的背景を持つ従業員のマネジメントや、社内コミュニケーションにはかなり苦労しました。乱立する競合や、リテイル業界そのものの環境変化が激しいなかで、いかに組織として国際的な競争力を保つか、というのは大きな課題の一つです。(以下略、)