これらを夢物語ではなく現実にしようと奔走する若者たちがいる。10月4日から6日まで開催されたフォーブスの「アンダー30サミット」において、29歳以下の社会起業家が賞金100万ドルのグランプリを競い合う「Change the World」コンペが行われた。1,400人以上の観衆の前で事業プランを発表したのは、2,500人以上の応募者の中から審査を勝ち抜いた6組のファイナリスト。彼らの活動内容を紹介しよう。
キア・ウィリアムズ(29)、 SIRUM共同設立者
カリフォルニア州スタンフォードに拠点を置くSIRUM(Supporting Initiatives to Redistribute Unused Medicine)は「未使用医薬品のマッチングサイト」。米国では毎年50億ドル相当の未使用の医薬品が廃棄されている一方、処方薬を買うお金がない患者が5,000万人いる。SIRUMは両者をつなぐことで医薬品を再配分するプラットフォームだ。提供者である医療機関や製薬会社が余剰在庫を記入すると、その処方薬を必要としている病院やクリニックが表示され、提供者はSIRUMが手配した配送手段を使って病院やクリニックに直接送ることができる。
アマラ・ハンフリー(27)、Gooru共同設立者
ハンフリーが2011年にプラサッド・ラムと共同で立ち上げたGooruは、幼稚園から高校までの学習カリキュラムを生徒一人ひとりの理解度に合わせてデザインできるプラットフォーム。クラウドに集められた2,000もの無料の教育リソースや小テストを組み合わせて生徒の自主的な学びを促す仕組みだ。また教師も生徒の進み具合をオンラインで常に確認できる。設立当初のキャッチフレーズは「学びのサーチエンジン」だったが、現在は「学びのナビゲーター」。カリフォルニア州レッドウッドにオフィスを構える。
ダニエル・ユー(22)、Reliefwatch CEO
Reliefwatchはインフラが整っていない途上国の医療機関を対象にした医薬品などの在庫管理ソフトウェアを開発。医療従事者はモバイルでReliefwatchにアクセスし、音声ガイドに従って数字を打ち込むだけでクラウド上のデータが更新される。ユーはエジプトの小さな町に留学中、町の薬局が在庫切れや有効期限切れを起こしがちなこと、そして誰もが携帯電話を持っていることに着目し、このシステムを思いついた。今後は農業など他の分野にも応用させたいと考えている。開発拠点はシカゴ。
ゴビンダ・アップアディー(27)、LEDsafari代表
LEDsafariは手作りのソーラーLEDランプの普及活動を行うスタートアップ。スイスのローザンヌを拠点に、これまで主にインド、東アフリカの子ども400人以上に低コストで持続可能なランプの作り方を教えてきた。エンジニアであるアップアディーは修士論文の研究でインドの電力が通っていない村を訪れ、電気を見たことのない人々に電気とは何かを説明していた時にLEDsafariを考案したという。今後の課題はランプの改良と、世界の途上国で通用する教育プログラムを作ること。5年間で1,000万人に教えることが目標だ。
ポール・デュアン(23)、Bayes Impact共同設立者
統計学の「ベイズの定理」と、ビッグデータを活用して社会にインパクトを起こしたいという意志から名付けられたBayes Impactは、データサイエンスで社会問題の解決を図るサンフランシスコの非営利団体。行政との関わりが深く、フランスの公共職業安定所ではLinkedIn、Monster、Craiglistなどにある膨大な求人情報から利用者に合うデータを抽出して提供している。天安門事件後にフランスに移住した両親のもとに生まれたデュアンは、子どもの頃は政治家を目指していたがデータサイエンスに転向。アルゴリズムを作り出すデータサイエンティストには無数の人々の行動を変える力があると気づいたという。
ヘザー・コンキャノン(27)、エリザベス・グエン(27)、Unitarian Universalist Community Cooperatives(UUCC)
UUCCは各教徒がそれぞれの信仰や思想を追求するリベラルな宗教、ユニタリアン・ユニヴァーサリスト協会のメンバーが運営する共同生活体。コンキャノンとグエンは2010年よりUUでボランティア活動を始め、他のボランティア仲間とともにボストンの古い一軒家を改装してコーポラティブ住宅Lucy Stone Co-Opを作り上げた。現在は13人の住民が互いに助け合いながら精神修行に励み、持続可能な生活を送っている。近いうちに15人から20人が住める2軒目を設立する予定だ。