このところ、アリババの成長は減速している。同社は最近、家電量販大手の買収や、配車アプリのDidi Kuaidiへの出資を含め、総額約150億ドル(約1兆8,000億円)の投資を発表したが、これらの投資がアリババの利益を押し上げるには、まだしばらく時間が掛かるだろう。
「世界最大の電子商取引企業を傘下に持っているからといって、我々が電子商取引の会社になる訳ではない。あらゆる会社が、アマゾンになる可能性を持っているはずだ」とマーは学生らを前にして述べた。
マーは、中国経済の減速が事業に影響していることは認めたが、アリババ上での消費金額は増え続けていると述べた。アリババの流通総額は、中国小売市場全体の約12%を占め、アクティブバイヤーの数は3億6,700万人に上る。
「これからは、政府ではなく我々の出番だ。中国経済はそれほど悪くない」
マーは最近、ワシントン州シアトルで、中国の習近平国家主席や、米国のIT企業のCEOらと面会している。マーはヤンに対し「米中のビジネスリーダーの間には多くの誤解があり、両者はもっと対話をするべきだ」と述べた。
また、マーは「アリババの利用者の約60%は女性だ」とし、アリババ社内でも女性従業員が大きな役割を果たしていることを強調した。マーによると「アリババでは管理職の約三分の一と、上級管理職の四分の一」が女性だという。
女性の管理職を増やすことは、ジェンダー的な意味合いだけでは無い。家庭の購入の意思決定権を持つ女性たちを、より理解することにつながり、ビジネス的にも理に適っているとマーは言う。
さらに、マーは「私は大気や水質の汚染をとても心配している」と語り、アリババが毎年売上の0.3%を環境対策に投じていると説明した。
「あなたが10億ドルのお金を手にしたとき、それはあなた自身のお金ではないことを忘れてはならない。人々があなたが他の誰よりも資源を有効に管理してくれると信じて、あなたにお金を託しているのだ」
ジェリー・ヤンは1994年にヤフーを創業した後、1997年に初めて中国を訪問した。その当時、マーは対外経済貿易合作部の若手職員で、ヤンを万里の長城に案内するガイドだった。マーは元英語教師で、中国版イエローページを立ち上げたものの、失敗していた。数ヶ月後、マーは中国の企業を世界とつなぐことを目的としたスタートアップを創業した。それがアリババだ。
ヤンはYahooのCEOに就任する前の2005年、マーの将来性に賭けることにした。中国進出を目指すYahooは、アリババに10億ドルを出資したのだ。マーによると、この取引はあわや頓挫しかけたが、最後は酒の席でヤンがマーを説得したという。
「ヤンが私を小さな日本料理店に連れて行ってくれ、大きなグラスに入った日本酒を頼んでくれた。それは、私がそれまで飲んだ中で最も高価な日本酒だった」とマーは話す。
「私は、インターネットが世界を変えると確信していた」
二人の交流はその後も続き、昨年、アリババが通話アプリTangoに2億1,500万ドル(約258億円)を出資した際、ヤンが間を取り持った。
「打ち負かすことができなければ、仲間になることだ」とヤンはスタンフォード大学で語った。「我々はアリババとチームを組むことができて、とても幸運だったと思っている」とヤンは続けた。