Forbes JAPAN 2025年5月号は「新・ヒットの研究」特集。世の中で今、注目されている商品には、最先端のエッセンスが詰まっている。爆発的ヒット作の徹底分析と、次に来る消費トレンドの予測を通じて、これからのヒットの法則を探った。
かつて「新人類」と呼ばれた1960年前後に生まれた世代は、シニア消費の中心的存在だ。10代や20代にバブルを経験し、ディスコやサーフィンといったエンタメに興じた彼らの購買意欲を掻き立てる方法とは。シニア女性向け雑誌『ハルメク』のシンクタンクであるハルメク生きかた上手研究所所長の梅津順江に聞いた。
シニアの消費トレンドは変化が早まっている。ここ1~2年では、スマートフォンでポイント活用をする「デジ得シニア」が増えたり、インスタグラムでおしゃれな服装や日常を発信する「#インスタグランマ」が現れたりと、シニアのデジタル活用が当たり前になった。数年前は、若い世代と比べて情報をキャッチするのにタイムラグがあったが、今はかなり縮まっている。企業は、こうしたシニアの情報取得の変化を押さえておくべきだ。
そのうえで、シニア向けの商品企画では「普遍的なもの」と「流動的なもの」があることを理解する必要がある。前者は体の悩みだ。65歳ぐらいから膝の悩みを抱え、70歳を過ぎると手のこわばりや白内障が悩みのタネになる。
ハルメクの通販事業で売り上げを伸ばしているのが、2024年3月に発売した「ふっかるコラーゲン」だ。これは1日1さじ、コーヒーや味噌汁に粉末を溶かして摂取することで、含有成分がひざ関節をケアしてくれる機能性表示食品。60代女性の多くが「まだまだ自分の足で歩きたい」「自分はまだ高齢者ではない」という気持ちをもっている。「ふっかる」は「フットワーク軽く」という意味で、シニアの願望をかなえられることを表現した。
シニアの新たな習慣も相まって売れている。その火付け役となったのが、50代・60代女性を中心に約80万人の顧客を抱えるジム「カーブス」である。これまでのシニアは、健康のためのサプリメントを錠剤で摂ることが多かった。カーブスは、この世代になじみのなかった粉末プロテインを開発してブームをつくり、「粉を水に溶いて飲む」という新習慣を生み出した。そのためコーヒーや味噌汁に溶かすという方法が抵抗なく受け入れられていると分析している。シニアの習慣の変化をとらえることも必要だ。