マーケティング

2025.04.12 11:30

「エモ」の次は? 細分化するZ世代の心をつかむ方法

Shutterstock.com

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Forbes JAPAN 2025年5月号は「新・ヒットの研究」特集。世の中で今、注目されている商品には、最先端のエッセンスが詰まっている。爆発的ヒット作の徹底分析と、次に来る消費トレンドの予測を通じて、これからのヒットの法則を探った。

世界人口の3割を占めるZ世代。共感性を大事にする「エモ消費」が顕著だが、Z世代マーケティングの先駆者である今瀧健登は、そこから一歩進んだトレンドが生じていると指摘する。


「エモ消費」は、経験・ハッピー・コミュニケーションという3要素で構成されるマーケティング上の概念だ。Z世代(1990年代後半~2010年に生まれた世代)によく見られる消費行動で、商品が自分の経験したことに関連し、込められたメッセージに共感でき、さらにユーザー同士で感想を言い合うなどコミュニケーションが発生することで引き起こされると考えている。

テクノロジーの著しい発展によって、もはや商品を機能で差別化することは困難になってきた。どのメーカーの商品も一定以上の品質が保証されているため、特に若い消費者では、商品が生まれたストーリーへの共感を購買の判断軸にするようになった。

SNSによる情報量の爆発的増加が与えた影響も大きい。情報過多社会では、すべての情報に細かく目を通したり、一つひとつを熟考して選んだりするのは現実的ではない。Z世代は直感的に「好きか嫌いか」を判断する傾向にあり、商品やサービスに対するハッピーな感情を喚起するパッケージや世界観をつくることが大切だ。

具体例として、私たちが手がけた「タイパ至上主義麻雀」を挙げよう。麻雀の愛好者と未経験者をつなげる商品で、従来は136枚使う牌を36枚に減らし、やったことのない人でも気軽に楽しめるようにルールを簡略化。プレイ時間も5分程度で2人から遊べるようにした。

我々の調査で、若い麻雀愛好家には「麻雀を知らない人にも広めたい」「同世代で一緒に遊べる友達が欲しい」というコミュニケーション欲求があるとわかり、未経験者に「これなら自分もできそう」と思えるゲーム設計にすれば、両者をつなげられると考えた。発売後は予想を上回る注文があり、一時品切れになるほどだった。

私が最も重視しているのは、解像度を高めた特定のユーザーの声を企画やプロモーションに落とし込む「N=1」マーケティングだ。熱量の高いコアファンがなぜその商品を好きなのかを徹底的に深掘りし、それを元に商品設計をする。

「タイパ至上主義麻雀」の開発にあたっては、「麻雀ならではのかけ声を言い合いたい」という声を拾い、パッケージに「ロンとかリーチとか、言いたい。」と載せた。その結果、SNS上で一気に拡散された。Z世代は、同世代の意見や感想を重視する。SNSでの「この体験で幸せになった」「この商品が自分の悩みを解決してくれた」という投稿が新たな顧客を引き寄せる。この「共感の連鎖」がエモ消費の核心だ。

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文=安心院 彩

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