経済の先行きが不透明でインフレ率が高い時、金のリターンは株式を上回る傾向がある。反対に、経済成長が力強く予測可能で、インフレ率が低下傾向にあるときは、株式のリターンは金を上回ることが多い。
トランプ政権下で市場の不確実性が高くなっていることはほぼ確実であり、米国による関税の引き上げと、それに対抗する各国の関税政策がインフレを押し上げる公算が大きい今、私たちは金にとっての黄金時代を迎えている。
歴史的に見て、通常、株式は他の資産クラスをアウトパフォームする。例えば、過去70年間を見ると、ダウ平均株価は1万3900%上昇し、インフレ調整後の金1オンスあたりの価格上昇率である7800%を大きく上回っている。
しかし、今後5年間は、地政学的リスク、インフレ、中央銀行の買い支えにより、金は株式をアウトパフォームし、2030年には1オンスあたり約5000ドルまで上昇する可能性がある。一方で、今後5年間が安定した低インフレの成長期であれば、収益と配当の増加によって株価は金よりも上昇するだろう。
過去に金が株を上回った時期、その逆の時期、それらの理由、そして今後あなたがすべきことを紹介しよう。
金が株をアウトパフォームした時期
恐怖が高まると、人々は金を買う。高校2年生のとき、私は歴史の先生に「なぜ人は金を買うのですか?」と尋ねた。当時の私は、金は経済的価値の保存手段として役に立たないものだと考えていたからだ。その教師は、まるで私が無知であるとでも言うかのように、ただ私を見つめるだけだった。
私の疑問に対する答えは、過去70年間で金がダウをアウトパフォームした期間を分析すると見えてくる。
・1971年から1980年
MacroTrendsによれば、この間、ダウが25%下落したのに対し、金は約2300%上昇した。その理由は、為替相場の安定を目的としたブレトン・ウッズ体制が終了し、スタグフレーション(高インフレと経済成長の鈍化)や地政学的緊張が高まったためとされている。
・1999年から2011年
MacroTrendsによれば、この間、ドットコムバブルの崩壊によりS&P500種株価指数が15%下落する一方で、金は約570%上昇した。
・2020年から2023年1月
MacroTrendsによれば、この間、金は75%上昇し、S&P500は60%上昇した。この期間中、世界は新型コロナウイルスの大流行、FRB(連邦準備制度理事会)による景気刺激策、高インフレ、ロシア・ウクライナ戦争を経験した。