ウクライナ南部ヘルソン州方面のロシア軍指揮官たちにとって、かつてウクライナ空軍のS-300地対空ミサイルシステム関連の防空指揮所があった掩蔽(えんぺい)壕は、野戦本部を置くのに安全な場所だと思えたのかもしれない。
というのも、ほとんどが地下に隠れているうえ、おそらく堅固な扉もしつらえられていたからだ。
しかし、米国設計の精密誘導弾を搭載できるように改修されたウクライナ空軍のMiG-29戦闘機にとって、それはたんなる目標のひとつにすぎなかった。3月31日かその少し前、超音速機であるMiG-29の一機がこの掩蔽壕に向けてGBU-62滑空爆弾を投下した。有翼の爆弾は壕の扉を突き抜けたようだ。
The crew of a MiG-29, with a precise drop of a GBU-62, eliminated a "high-ranking" enemy officer corps along with equipment at one of the enemy command posts near temporarily occupied Oleshky, Kherson region. pic.twitter.com/4cXxJTHOw8
— WarTranslated (@wartranslated) March 31, 2025
ウクライナのある軍事ブロガーは、この空爆によって「高級将校団が装備もろとも無力化された」と書いている。「こうした打撃は敵軍から明確な指揮統制を奪うとともに、部隊の士気を著しく低下させる」と続けている。
空爆の狙いは、ヘルソン州を流れる広大なドニプロ川の島々に対する攻撃を行っているロシア軍部隊の指揮官を排除することにあった。「指揮官がいなければわれわれの島への上陸もない」と同じブロガーは説明している。
ウクライナ空軍は新たな弾薬や航空機の導入を進めて、小規模ながらも強力な精密打撃部門に変貌しつつある。今回の攻撃はその過程で行われてきた一連の攻撃のひとつだ。
精密爆撃機
ウクライナ空軍は旧ソ連製のミグとスホーイ、デンマークやオランダから供与されたF-16戦闘機、フランスから供与されたミラージュ2000戦闘機という雑多な構成の作戦機をおよそ100機運用しているが、おそらくそのどれも、衛星・慣性誘導の滑空爆弾を用いる精密爆撃に対応している。これらの滑空爆弾には米国製のGBU-39とGBU-62、フランス製のAASM、さらに可能性としてはウクライナ国産の新型滑空爆弾も含まれる。
もちろんロシア空軍も精密爆撃を行っている。さらに言えば、ロシア空軍は作戦機をウクライナ軍よりも何百機も多く配備しており、空戦でも数的優位に立っている。