3年1カ月およぶロシアの対ウクライナ全面戦争に関する最近のある集計によると、ロシア軍の車両の損失では現在、バン、小型車、全地形対応車(ATV、俗称「ゴルフカート」)といった主に民生用の車両や、軽装甲のトラックがおよそ7割を占めている。
もっとも、ロシア軍の車両の残骸に占める民生車両や軽装甲車両の割合が増えているからといって、この戦争の1100kmにわたる前線でロシア軍の戦車や歩兵戦闘車(IFV)、装甲兵員輸送車(APC)、つまり機械化部隊が伝統的に用いてきた車両の損失数が減っているわけではない。
むしろ、接触線に点在する撃破されたり遺棄されたりした戦車などの装甲戦闘車両の数は、1年前よりも増えているのが実情だ。
装甲のあるなしを問わず、ロシア軍のさまざまな車両の損失数が増加していることは、ロシア軍が過去1年半にウクライナ東部とロシア西部の複数の方面で始めた同時攻勢の激しさを物語っている。
最近まで、ロシア軍はほぼすべての方面で、大量の兵員と、公式・非公式のルートを通じて調達できるあらゆる車両を投じて攻撃を行っていた。
しかし、ロシア軍の攻撃が増えるにつれて損失もかさみ、戦車やその他の戦闘車両は増大する需要に比べて不足してきた。その結果、ロシア軍の旅団や連隊は移動手段をATV、国産小型車ブランド「ラーダ」の乗用車、あるいは「ブハンカ」の愛称で知られるバンなどに切り替えざるを得なくなった。
それは数字に表れている。OSINT(オープンソース・インテリジェンス)アナリストのアンドルー・パーペチュアの集計をもとに別のOSINTアナリスト、クリス・ジョーンズが作成した図表によると、ロシア軍は2024年2月、車両を約375両失い、その7割近くを戦車とIFV、APCが占めていた。
1年後の2025年2月、ロシアは車両を約1100両失い、うち戦車とIFV、APCは3割足らず(300両超)だった。損失の7割は民生車両や装甲トラックが占めた。戦車とIFV、APCの損失は全体に占める割合は低下しているものの、1年前より絶対数では増えている。