ウクライナのドローン(無人機)が20日夜、前線から650kmかそこら離れたロシア南部サラトフ州サラトフ市近郊にある戦略爆撃機の拠点、エンゲリス2空軍基地を攻撃した。
広大な基地内に備蓄されていた大量の弾薬に引火し、基地周辺の家屋の屋根を吹き飛ばすほどの連続爆発を引き起こしたもようだ。
Massive Ukrainian 🇺🇦 air strike on an ammunition depots at Engels Air Base in Saratov, Russia located ~650km from the frontline
— Ukraine Battle Map (@ukraine_map) March 20, 2025
Potentially a strike using a Ukrainian Neptune Cruise Missile, meaning it could be the furthest Ukrainian missile strike of the entire war pic.twitter.com/ZMsZjaDbH8
エンゲリス2空軍基地やその爆撃機連隊を狙った攻撃はこの2カ月半ほどで3回目だ。この夜の空襲によって、Tu-95、Tu-160両戦略爆撃機を含むロシア空軍爆撃機が、ウクライナの都市に向けて繰り返し発射している巡航ミサイルの一部が破壊された可能性がある。
After doing a detailed geolocation of Ukraine’s 🇺🇦 strike on Engels air base, using the position of several buildings and the position of the sun at the time of the strike
— Ukraine Battle Map (@ukraine_map) March 20, 2025
The target was located as an ammunition bunker at Engels Air Base, likely storing many missiles and bombs pic.twitter.com/Iqr87fd6c0
ウクライナは1月8日、この空軍基地への燃料補給施設をドローンで攻撃し、最大80万tの燃料が貯蔵されていた施設で大規模な火災を引き起こした。さらに、数日続いた火災がようやく鎮火した直後だった同月14日、ウクライナのドローンは再び同じ施設を襲った。「悪しき者に平安はない」とウクライナの政府機関、戦略コミュニケーション・情報安全保障センター(SPRAVDI)は当時コメントしていた。
エンゲリス2空軍基地に対する一連の攻撃は、米陸軍の用語で言う「爆発の左側(left of the boom)」で対処するというウクライナ軍の努力のひとつだ。イラクやアフガニスタンで路傍爆弾による待ち伏せ攻撃を防ぐために、米軍は問題を先回りして、爆弾を製造・供給する人物を追い詰めることを学んだ。左から右に進む時間軸で攻撃の「左」、つまり攻撃の前の時点でそれをつぶすというものだ。
ウクライナは米欧製防空ミサイルの不足もあって、ロシア軍の爆弾やミサイル、ドローンを近くまで飛んできた段階で迎撃するのに苦労している。そのためウクライナも爆発の左側を狙って、ロシア領内の弾薬庫や航空燃料基地、ドローン工場などに対するドローンやミサイルでの攻撃を増やしてきた。
防空網の穴
今週、ドナルド・トランプ米大統領とそれぞれ電話協議したロシアのウラジーミル・プーチン大統領とウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領は、エネルギー施設を対象とする停戦に同意した。ウクライナの電力施設やロシアの石油施設は、ミサイルやドローンによる攻撃からある程度解放されるかもしれない。