エンゲリス2空軍基地はエネルギー施設ではない。それでウクライナは、この基地やその関連施設に今年3回目となる「トライプル・タップ」攻撃を加えた。
ウクライナによるこうした先制攻撃が可能なのは、ロシアの防空網がドローンの脅威に適応できていないからだ。エンゲリス2空軍基地での爆発と前後して、ウクライナのウクルスペックシステムズ社の全長約2.5mのPD-1系らしいドローンが現場付近を低空飛行していたという目撃情報もある。
このドローンは攻撃の一環で小型の爆発物を投下したのかもしれないし、あるいは攻撃ドローンのために空中監視を行っていたのかもしれない。いずれにせよ、このドローンはロシア空軍の最も重要な基地のひとつの上空を妨害されずに飛んでいたようだ。
ロシア、ウクライナ双方の防空網の穴は、ロシアが続けてきたウクライナの都市に対する爆撃と、それを抑制すべくウクライナが試みてきた「爆発の左側」を狙ったドローン攻撃の背景にある、あまり語られていない事情だ。
ウクライナの場合、米国製パトリオット地対空ミサイルシステム6基と欧州製SAMP/T地対空ミサイルシステム2基という現行の長距離防空体制では、国内の人口密集エリアすべてを守ることはできない。だからロシア軍爆撃機の燃料や弾薬をたたくしかない。ただし、それが成功するのはロシア側の防空網が機能していない場合に限られるだろう。