2024年における仮想現実(VR)ヘッドセットの世界出荷台数は、アップルのApple Vision ProやメタのMeta Quest 3Sなどの注目デバイスの発売があったにもかかわらず、大きく減少したことが最新の分析データで示された。
調査会社カウンターポイント・リサーチが3月18日に発表したレポートによれば、2024年におけるVRヘッドセットの世界出荷台数は、前年から約12%減少した。この背景には、「エンタメ系以外の魅力的なコンテンツの不足」や長時間使用した際の眼の疲れやバッテリー持続時間の問題といった、従来から指摘されていた課題が挙げられた。
また、出荷データからは、2023年10月発売のMeta Quest 3の方が、その1年後の2024年10月に発売された廉価版のMeta Quest 3Sよりも注目を集めたことも示された。
しかし、直近の数カ月では、メタがVR市場での支配力を再び強めていることも明らかになっている。この市場では、2024年第4四半期におけるメタのデバイスのシェア(出荷台数ベース)が84%に達し、前四半期の65%から大幅に増加していた。
一方、この期間に大きく市場シェアを落としたのが、アップルと中国メーカーのPicoだった。Apple Vision ProとPico 4 Ultraの販売台数は、2024年第4四半期にMeta Quest 3Sが市場に投入されたことで大きく押し下げられた。
ただし、より広範なヘッドセットの市場にとっては必ずしも悪いニュースばかりではない。カウンターポイントは、中国のVRヘッドセットメーカーのDPVRが、特に「企業向け」のセグメントで売上を伸ばしていることを指摘した。DPVRはまた、PC向けVRプラットフォームに対応する「DPVR E4」と呼ばれるコンシューマ向けの製品も展開している。
カウンターポイントはまた、2025年から2026年にかけて市場が再び活性化すると予測しているが、その原動力となるのがVRヘッドセットではなく、「拡張現実(AR)スマートグラスの復活」だと述べている。
今年1月に開催されたコンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)や、3月にバルセロナで開催されたモバイル・ワールド・コングレス(MWC)では、SnapやXReal、Nuanceなどの企業から新たなARスマートグラスが発表された。メタも昨年9月に「Orion」と呼ばれる高度なARスマートグラスを発表していた。
メタは、Orionを「これまでで最も高度なARグラス」と称しているが、発売日はまだ未定で、「近い将来に消費者向けモデルの出荷を開始する予定だ」と述べている。
さらに、サムスンの複合現実(XR)ヘッドセットも、この分野のイノベーションを促すと期待されており、今年後半とされるグーグルによる新OS「Android XR」の立ち上げと同時期の発売が計画されている。しかし、今月初めの報道によると、サムスンのこのヘッドセットも、Apple Vision Proと同様に、発売当初に大きな売上は見込めない模様だ。