ドナルド・トランプ米大統領は14日、ソーシャルメディアに「まさにいま、数千人のウクライナ軍部隊がロシア軍に完全に包囲され、非常に不利で脆弱な状況に置かれている」とすべて大文字で書き込んだ。
ここでトランプが大仰な調子で言っている事態が、ロシア西部クルスク州で650平方kmほどの突出部を保持していたウクライナ軍部隊が10日か11日ごろ、撤収を始めたことについてなのは明らかだ。
たしかにウクライナ軍はクルスク州で敗れた。だが、包囲はされていない。クルスク州で戦闘任務に就いていたウクライナ軍のドローン(無人機)操縦士、Kriegsforscherは「それは嘘だ」と断じている。
ウクライナの調査分析グループ、フロンテリジェンス・インサイトの創設者であるTatarigamiも「わたしたちのチームはクルスクの状況をよく理解している。包囲された部隊はない」と説明している。
昨年8月、ウクライナ軍の強力な部隊がロシアの国土の一部を確保すべくクルスク州に侵攻した。ウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領はいずれこの土地を、ロシアに占領されているウクライナの土地と交換したい考えだった。
ウクライナ軍がクルスク州につくり出した突出部は6カ月あまり持ちこたえていた。しかし2月23〜24日ごろ、ロシア軍のルビコン先進無人技術センターの精鋭ドローン部隊が、突出部の中心地スジャ町のウクライナ軍守備隊を支える主要な補給線に対する攻撃を激化させ、ウクライナ軍の兵站に甚大な損害を与え始めた。
「秩序立った退却」
ルビコンのドローン部隊は複数の自爆ドローンによる周到な待ち伏せ攻撃といった「高度なドローン戦術」(アナリストのアンドルー・パーペチュア)を駆使し、ごく短期間のうちにウクライナ軍の車両を百両単位で撃破した。その結果、クルスク州のウクライナ軍部隊は補給が著しく困難になったとみられる。
2週間後の3月10〜11日ごろ、ウクライナ軍のほとんどはクルスク州から撤退したもようだ。貴重な重装備の一部をあとに残すことにはなったものの、人員数千人の命を守った。