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AI

2025.03.18 14:15

MIT石井教授が業界リーダーたちに問うた、AI産業に挑む覚悟

2025年1月、Forbes JAPANは日本のAI企業を対象に、ビジネスや社会への影響力を評価する「Forbes JAPAN AI 50」を発表した。この発表を機に、AI業界のリーダーたちが交流し、新たなビジネス機会を創出する場として、2月19日に東京・八重洲のブルガリ ホテル 東京で招待制ディナーイベント「Forbes JAPAN AI Executive Lounge」を開催した。

本イベントでは、日本経済を支えるレガシー企業の経営層と最先端のAI企業のリーダーが一堂に会し、異業種の知見を掛け合わせながら、AIビジネスの課題や未来の可能性について議論を交わした。その中心には、MITメディアラボ副所長の石井裕教授が登壇し、日本のAI産業に対して鋭い視点を投げかけた。

 


「AIエージェント元年」に求められる創造性

イベントの冒頭では、博報堂DYホールディングスCAIO(Chief AI Officer)である森正弥氏が、協賛企業として登壇。「今年は『AIエージェント元年』といわれる年であり、効率化や自動化の先に、いかに創造性を高めるかが問われている」と語った。AIを活用して企業やブランドがどのように寄り添い、新たな価値を生み出すのか。また、急激なブレイクスルーが起こる中で、企業がどのような戦略と覚悟を持つべきかが、今後の成長の鍵となると指摘した。

バラ色だけではないAIを取り巻く未来

イベントのハイライトとなったのは、MITメディアラボ副所長・石井裕教授と森正弥氏によるトークセッションだ。石井教授は、「テクノロジーは人間にとって強力なツールになる」としつつ、その裏には社会的責任が伴うと語る。「例えばAI技術によりドローンが的確に標的を殺傷・爆破することも可能にし、さらに政治的なメッセージを影響を与えたい人たちにターゲットボミング(標的爆撃)することにより、民主主義を転覆させることもできる。AIを使うことで、敵対する人間が共通のリソースを奪い合う戦いを加速することもあるだろう。『人間中心』というバラ色の幻想の未来を語るのではなく、武器化され得るAI技術について、我々が負うべき責任について考えたい」と、AIの倫理的課題にも言及した。

 また、石井教授は「テレプレゼンス」を超えるビジョンとして「テレアブセンス」という概念を提唱。テレプレゼンスとは、リモート環境においてもリアルタイムで相手の存在を感じながらコミュニケーションを取れる技術を指す。一方で、テレアブセンスは時間軸を超えた概念であり、離れ離れになってしまった人、亡くなった愛する人との擬似的な対話を可能にするビジョンとして紹介された。

「人は時間の経過とともに大切な記憶を失ってしまう。しかし、テクノロジーにより、消息を失った人、亡くなった人の記憶を思い出し、後世へと伝えることもできる」と、石井教授は語った。この概念は、AIが単なる利便性の向上にとどまらず、人間の根源的な感情に寄り添う新たな役割を担う可能性を示唆している。

 石井教授はさらに、AI技術の変化が波状的に押し寄せる中で、企業がどのように自己を確立し、独創性を持って挑戦すべきかを問いかけた。

「トレンドを追いかけても真の独創性は生まれない。人間が本当に求めるもの、自分自身が心から欲しいと思うもの、愛する人たちにも使ってほしいと思えるものでなければ、インパクトを与えることはできない」

「AIの世界では、マーケットシェアを取ることやプロンプトの書き方のノウハウで競争する次元を超えて、真にオリジナルなビジョンで勝負する人が出てきてほしい」と会場に提起し、既存の枠にとらわれない新規ビジネスの創出を鼓舞した。

次ページ > 参加者たちの声──「AIの進化は、人間の本質を問い直す」

text and edit by Arisa Tachibana / photograph by Aoi Haruna

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