集中力を保つ上で最大の難問のひとつは、仕事や勉強の途中で「スマートフォンを確認したい」「ソーシャルメディアを閲覧したい」などと、余計なことに手を出したい衝動に駆られること。こうした衝動に屈すると、集中力が途切れて生産性が落ちてしまう。
そこで、注意散漫になる原因をうまくコントロールし、タスクを順調に進めることに役立つ、シンプルだが効果的なテクニックを紹介しよう。「10分ルール」だ。大きなプロジェクトに取り組んでいるときや勉強中、あるいは子どもを長時間集中させようとするときなど、さまざまな場面で威力を発揮する。
「10分ルール」の仕組みはこうだ。ほかのことをしたくなったら、まずは「10分待て」と自分に言い聞かせる。すると我慢できる程度の短い「遅れ」が生じ、誘惑にすぐさま屈してしまいたい衝動に抗いやすくなるのだ。多くの場合、10分が経過するころには、スマートフォンをチェックしたい、気晴らしをしたいという衝動は収まり、再びタスクに集中できるのだ。
「10分ルール」の素晴らしさは、そのシンプルさにある。気晴らしをしたい衝動に無理やり抗うのではなく、ほんの少し遅らせるにすぎない。このやり方は、意外なまでに効果を発揮する。衝動はしばしば強く現れるが、引き延ばしているうちに当初の勢いを失っていく。10分だけタスクに集中し続けることで、邪魔が入るたび衝動に屈する悪循環を断ち切りやすくなる。
衝動を感じたときにはこのルールを発動し、すぐさま行動に移さず耐えられるように訓練しよう。そうすれば自制心が養われ、長時間集中する力が身に着いてくる。やがて、気を散らす物事への耐性が強くなっていることに気がつくはずだ。
「10分ルール」で集中力を保つ方法
10分ルールを有効活用する方法は、次の5つだ。
1. 手を休め、衝動を受け入れる
スマートフォンの確認やソーシャルメディアの閲覧など、気晴らしをしたい衝動に駆られたら、少しのあいだ手を止めよう。そして行動に移す前に、自分が衝動に駆られていることを認識しよう。それだけで、衝動に抗いやすくなる。
2. 10分待つことを誓う
自分自身にこう約束しよう。「気晴らしをする前に、10分待つ」と。遅らせることを明確に意識することで、衝動を抑える力を強化できる。
タイマーを10分にセットするのも方法のひとつ。特に、子どもに集中力を維持させたいときに役立つ。具体的な時間の感覚と目的意識が培われるからだ。仕事や勉強の途中でやりたくなったことは書き出すか、スケジュールに組み込み、後でできるようにしておこう。
3. 注意散漫になる原因を取り除く
タスクから注意をそらすものを見極めよう。スマートフォンなら通知をオフにするか、マナーモードに切り替える。または画面を下に向けて置き、誘惑を避けるのもいい。注意散漫になる原因が視界に入らないようにすれば、その分、集中力を維持しやすくなる。
4. 目の前のタスクに集中する
この10分間は、完全に目の前のタスクへ意識を集中しよう。真剣に取り組むうちに、気晴らししたい衝動が薄れていることに気づくかもしれない。
タスクをやり遂げる重要性と、それによって何を達成できるかを思い出そう。1日の自分の行動すべてを、パーパス(長期的な目標)と結び付けること。そうすれば、モチベーションを維持しながらタスクを続けやすくなる。
5. 10分後、まだやりたいか自分に聞く
10分が経過したら少しだけ時間を取り、さっきやりたかった気晴らしをまだやりたいかどうか、自分に聞いてみよう。スマートフォンの確認などたいていの衝動が薄れ、あとは中断することなく目の前のタスクに集中できることに気づくはずだ。