ウクライナが始めたのではない戦争をウクライナに終わらせるよう求めるという、ひねくれた異様な要求をしている米国は、ウクライナと長く続けてきた情報共有も停止した。
ドナルド・トランプ米大統領とJ・D・バンス米副大統領は2月28日、ホワイトハウスの大統領執務室で記者団を入れて行っていたウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領との会談で、前政権が決めた米国のこれまでの援助に対する感謝が十分でないなどとしてゼレンスキーを激しく非難した。情報の遮断はこのショッキングな会談から数日後に明らかになった。
この断絶は、ウクライナがロシアのミサイル攻撃から市民を守ったり、遠距離の目標を攻撃したりする努力を妨げるおそれがある。だが、その努力を止めることにはならないだろう。一方の米国は、人の命を救う情報からウクライナを隔離することで、むしろ自国の孤立を招くことになる。とくに宇宙分野でそうなるだろう。
当初、大規模な軍事衛星群もなければ同等の能力を持つ商用衛星を借りる資金もなかったウクライナは、何百もの通信・監視衛星という米国の大規模な衛星群や、米国など支援諸国に使用料を肩代わりしてもらう商用衛星サービスに大きく依存していた。
これらの衛星はウクライナ軍の兵士の連絡やドローンの制御、弾薬の誘導、レーダーやカメラによるロシア軍部隊の発見、無線探知を通じたロシア軍の指揮ネットワークの追跡などに役立ってきた。昨年、米空軍大学の学術誌エーテルに寄せた論考で、著者のロビン・ディッキーとマイケル・グリーソンは「ウクライナは(ロシアが全面侵攻を始めた)2022年2月以前の能力からすると、予想をはるかに超えて宇宙システムを活用できている」と指摘している。
ところがトランプ政権が事実上、ロシアの利害に合致する方向に動くという衝撃的な展開になるなか、今週、そうした活用は風前の灯になった。米国とウクライナの情報共有に詳しい情報筋は米CNNに「かなりひどい状況だ」と危惧している。「(情報共有の停止は)軍事支援と対外援助の停止と相まって、和平合意を結ぶまでもなくロシアの勝利を約束するようなものだ」