無頓着な指揮官によって敵の弾道ミサイルの射程に入る野外に集められた訓練兵が、その攻撃を受けて大量に死亡するというのは、ウクライナに対するロシアの3年あまりにおよぶ全面戦争でおぞましい慣例になっている。普通、新兵らをこうした攻撃に無慈悲にさらすのはロシア軍だ。だが、今回はウクライナ軍だった。
3月1日、ロシア軍のオルラン10とみられる偵察ドローン(無人機)はウクライナ南東部のウクライナ側前線の後方に130kmほど侵入し、ドニプロペトロウシク州チェルカシケ町の上空に滞空した。チェルカシケには、通常はウクライナ陸軍第168予備大隊が駐屯する訓練基地がある。同大隊はこの日、新たに編成された第157独立機械化旅団から移籍した兵士らを受け入れていたとも伝えられる。
致命的なことに、基地周辺に偽装ネットは張られていなかった。兵士たちを守る土塁のような防御設備もなく、彼らは白昼歩き回っていた。敵のドローンを撃墜する防空システムも配備されていなかったようだ。ウクライナの戦場記者ユーリー・ブトゥソウの報告によると、チェルカシケの基地に滞在したことのある兵士は、基地の指揮官たちは訓練兵を無防備な状態にしていることに普段から「無関心」だったと証言したという。
ドローンの指示を受けて、イスカンデル弾道ミサイルが猛スピードで飛来した。先週、ウクライナを襲ったロシア軍の弾道ミサイル約20発のうちの1発だった。ブトゥソウによれば、この攻撃によって兵士32人が死亡し、およそ100人が負傷した。
The Russian MoD posted a video two days ago of an Iskander-M ballistic missile strike on a training area near Cherkaske, Dnipropetrovsk oblast corrected with a Russian UAV. Yuriy Butusov said the 168th Reserve Battalion is based there with soldiers who left their units waiting to… pic.twitter.com/cydkgV1NH2
— Rob Lee (@RALee85) March 3, 2025
ウクライナ陸軍は犠牲者とその遺族に「深い哀悼の意」を表した。ミハイロ・ドラパティー陸軍司令官(少将)は、調査を行い、過失のあった将校に責任負わせることを誓った。「誰も釈明や形式的な報告書の裏に隠れることはできない。真実が官僚主義の霧に包まれようとするだろうが、わたしはそれを許さない」とソーシャルメディアへの投稿につづった。
ウクライナ軍によるロシア軍の訓練場に対するたび重なる攻撃と、それほど頻繁ではない、今回のようなロシア軍によるウクライナ軍の訓練場に対する攻撃に違いがあるとすれば、公式の反応、さらに言えば軍の最高レベルで明白に示される怒りの有無だ。