ビズリーチは1月28日、新サービスの「社内版ビズリーチ by HRMOS」をローンチした。同サービスは社員のレジュメや社内ポジションの要件を自動で作成し、社内スカウトなどによる最適な人材配置と人材流出防止を可能にする。
冒頭のコメントは「社内版ビズリーチ」の記者発表会後に、ビズリーチ創業者で持株会社のビジョナル社長 南壮一郎が発したものだ。同社は「社内版ビズリーチ」を転職サイト「ビズリーチ」に次ぐ事業の柱にしようと力を注ぐ。
しかし、すでに社内スカウトシステムを提供する企業は存在する。大手ではみずほ銀行やパーソルのように自前で社内スカウトシステムを開発し、運用する企業もある。それらの企業によって、市場の機会はすでに奪われつつあるのではないか。なぜ今あえてビズリーチは参入するのか。
後発でも勝てる、ChatGPTには決してない強み
転職サイト「ビズリーチ」だけでは、いずれ成長が限界に達するとの考えがあったのか、率直に尋ねると、南から次のような答えが返ってきた。「社外労働市場はこれからも伸びていくでしょう。そもそも社内スカウト活動と社外スカウト活動のどちらがいい悪いの話ではありません。私も経営者なので、社内で欠員が出たらまず社内に最適な人がいないか探します。重要なのは社外と社内の労働市場、両方に同じ情熱を傾けて、同じリソースを割いて最適な人の配置ができる環境をつくることです」
さらに、「社内版ビズリーチ」がもつアドバンテージについて南は語り始めた。
「我々には、約16年間『ビズリーチ』で培ってきた270万人以上の会員と3万社以上の企業の転職市場データがあります。重要なのは、我々がこれまでレジュメや求人データから人材と企業の状況を可視化し、それらをいかに上手く結びつけるかを追求してきたこと。人材とポジションのデータを貯めるだけの仕組みなら他社でも作れますが、この規模でそれらの高精度なマッチングを可能にするデータをもっているところは他に見当たりません」

空きがあるポジションに適した人材を送り込むというマッチングの仕組みは、確かに社内でも社外でも基本的に共通するものだ。そのためビズリーチがこれまで転職サイトで培ってきたマッチングデータを、「社内版ビズリーチ」として社内向けに転用する発想は合理的だ。
しかし社内でのマッチングにも人材とポジションのデータは不可欠で、精度を保つにはそれらを頻繁に更新する必要がある。なかでも転職を考えていない社員にとって、通常業務をこなしながらレジュメを小まめに更新するモチベーションが、新天地でのキャリアアップや待遇改善を目指す求職者と同じレベルにあるとは考えにくい。
今回のサービス立ち上げにあたり、ビズリーチでは数十社にヒアリングし、大手企業15社ほどで実証実験を行ってきた。
「よく耳にしたのが、社員のレジュメと社内ポジション要件の文章作成に手間と時間がかかるという声でした。我々のシステムにはAIによるこれら文章の自動生成機能があるので、この負担が軽減され、高頻度でのデータベース更新が可能になります」
だが生成AIには無料か、安価な利用料を払えば誰でもアクセスできるものも多く存在する。単にAIで文章を生成するだけでは、競争優位性を確保しにくいのではないか。南は「ChatGPTではいろいろ質問しながらそれなりの文章が書けます」と認めると、すぐに疑問を払拭した。