近年、転職市場が活況を呈し、国内の転職希望者は1,000万人に達している。多くの人材が転職にチャンスを見出すなか、企業は人材流出を食い止めようと必死だ。
記者発表会でビズリーチの酒井哲也社長は、人材流出の背景には多くの企業が採用活動で求職者にスキルや経験を生かせるポジションを提示し、アピールを続ける一方で、社内の人材には寄り添えていない現状があると指摘。企業が「社員に選ばれるための社内スカウト活動が必要だ」と語った。
「社内版ビズリーチ」では、転職サイトの「ビズリーチ」を通じて16年間にわたり蓄積してきた求職者と求人のデータを生成AIに学習させ、社内の人材とポジションとの高精度なマッチングを実現。社員が生き生きと働き続けられるようにキャリア形成の機会を提供し、離職を防止する。
同サービスの主な機能は3つ。1つ目は、社員のレジュメと社内ポジション要件の自動作成だ。
生成AIを使い、社内にある職務経歴書や目標管理データ、人事データなどから社員のキャリアサマリーや保有スキルをレジュメとして書き出すほか、ポジション名や人材のイメージから社内ポジション要件を自動で作成。従来、手間と時間かかっていた社員情報とポジション情報の言語化を、大きく効率化できる。
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2つ目は、そうして社員のレジュメと社内ポジションのデータベースを構築することによって、ポジションの充足状況をリアルタイムでモニタリングし、最適な人材配置ができること。部署や職種、役職などの分類でも可視化や要員管理が行えるほか、専任担当によるサポートも受けられる。
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3つ目は、社内公募やスカウトによる人材マッチング。人事や部門担当者は「ファイナンスに強い人」「Aさんみたいな人」などの自然な言語で社員を検索できるほか、キャリアプランや等級、在籍年数などの絞り込みでも社員の抽出・発掘ができる。候補の社員にはスカウトを送ることができ、社員も公開されている社内ポジションに応募したり、興味があることを意思表示したりできる。
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大手は自前で、既存事業者も。なぜ今「社内スカウト」か
「社内版ビズリーチ」は日系大手企業15社をパートナー企業として、検証・開発が進められてきた。2024年8月からは「HRMOS タレントマネジメント」の一部機能として提供が始まり、今回、正式にリリースされた。すでにキリンホールディングスなどで先行導入が進み、3年で1,000社の導入を目指す。社内スカウトについては、みずほフィナンシャルグループなど自社で仕組みをつくり、社員に向けて運用している大手企業が存在する。また、SHIFTグループのヒューマンシステムが手がける「トレジャーキャリア」など、社内スカウト機能をもつ社内公募システムもある。
そうした意味で「社内版ビズリーチ」は、社内スカウトサービスとして後発とも言えるだろう。ではなぜ今、ビズリーチは満を持して同サービスの提供を開始するのか。ビズリーチ創業者であり、親会社のビジョナル南壮一郎社長に迫ったインタビュー記事を、Forbes JAPAN Webでは近日中に公開予定だ。