「3A(麻布、赤坂、青山)」に住む富裕層
まず言葉の定義を確認しておきたい。そもそも中国新移民を構成する「中国人富裕層」や「アッパーミドル」とはどのような人たちなのか。
舛友さんはこう話す。
「富裕層というのは中国の大企業のCEOや起業家などで、典型的には港区の『3A(麻布、赤坂、青山)』に、アッパーミドルは経営者などが中心で、江東区のタワマンなどに住んでいます。
新移民の人たちは、資産的には日本の中間層より豊かという実感があります。潤日は、主に2022年の上海ロックダウン以降に来日した人たちですが、2018年の国家主席の任期制限の撤廃などを含む憲法改正以降に現れた現象と捉えてもいいかと思います。現時点で国内にざっと数万人という規模です」

彼らにとっての望みは「海外で自由に動けるベースを確保する」ことだ。経済的な事情だけが理由ではないのである。
中国新移民を1つの固定したイメージで捉えるのは間違っている。舛友さんはこう続ける。
「新移民の人たちの特徴はいろいろ。彼らはグローバルな存在で海外経験も豊富。海外の国々のさまざまな条件と比較検討したうえで来日を選んでいます。
ただかつての来日組とは違い、日本語習得をしようとしない傾向があり、そのぶん彼らは中国のSNSでつながる独自のコミュニティを形成していますが、日本語がわからないため、中国の慣習をそのまま持ち込み、日本社会から孤立しがちです。
一方、中国の体制にうんざりして精神的に参ってしまっている人たちもいます。知識人や芸術家の多くは中間層で、URなどの公団住宅に住む人たちが多そうです。帰化した人たちも含めて約100万人いるとされる在日中国人ですが、次に現れる10万人、すなわち新移民の影響力はこれまでとは桁違いになる可能性があると考えています」
この指摘が舛友さんの新しさだ。