37万部のベストセラーとなった『「学力」の経済学』の著者である中室牧子氏が、9年の時を経て、世界で最も権威のある学術論文誌の中から信頼性の高い研究を厳選、これ以上ないくらいわかりやすく解説した待望の新刊『科学的根拠(エビデンス)の子育て』を発表した。
以下、ダイヤモンド・オンラインから同書『科学的根拠(エビデンス)の子育て』の引用記事を紹介する。
リーダーになることも将来の収入を上げる
「将来しっかり稼ぐ大人に育てる」方法の2つ目は、子どもたちが積極的にリーダーになるよう仕向けることです。
そもそも、リーダーとしての経験をほかのさまざまな経験と区別して数値化することができるのでしょうか。
カリフォルニア大学サンタバーバラ校のピーター・クーン教授らは、アメリカの高校生についての豊富な情報が含まれた複数のデータを用いた研究を行いました。
なかでもとりわけ「才能調査」は、アメリカの40万人もの高校生が、丸2日間、400問もの質問を含むアンケート調査やインタビューに協力して行われた大規模な調査で、高校生の行動や人格、能力に関するさまざまな情報が含まれています。
「才能調査」のデータによれば、22.0%の男子生徒が、3年間の高校生活のあいだに少なくとも1度は部活動のキャプテンや生徒会の会長などのリーダーを経験しているということです。
これ以外にも、「自然と人がついてきてくれるかどうか」とか「自分は影響力があるほうだと思うか」といったリーダーとしての資質に関する自己評価の質問や、「50人以上の前で話をすることがあるか」とか「会議の議長をすることがあるか」といったリーダーとしての行動を問う質問もありました。
さらに、この調査の対象になった高校生たちは、9~13年後にもう一度インタビューされましたから、クーン教授らは、高校時代のリーダー経験が就職したあとの収入に与える影響を調べることができました。
分析の結果、高校時代にリーダーシップを発揮した経験がある人は、そうした経験のない人に比べると、高校を卒業して11年後の収入が4~33%も高くなることが示されたのです。
もう少し具体的に言うと、高校時代に運動部のキャプテンだった男性は、部活動に参加してはいたもののキャプテンではなかった人と比較すると、11年後の収入が4.2%も高くなります。
また、リーダーシップに関する自己評価が上位3%の人たちは、自己評価が平均以下の人たちよりも11年後の収入が16.2%も高くなります。リーダーとしての行動を取った頻度が上位3%の人たちは、頻度が平均以下の人たちよりも11年後の収入が32.5%も高くなるということがわかったのです。
加えて、高校在学中にリーダーだった人は、高校を卒業して11年後に管理職に就く確率も高くなっていました。リーダー経験の賃金プレミアム(リーダー経験があることの賃金の上乗せ分)は、彼らが将来管理職になったときにもっとも大きくなることが示されています。