藤田豪:アトツギベンチャーと地方のスタートアップの経営者は年齢が近いことも多く、地域に対する危機感が共通していて話が合う印象があります。
柴田:新潟県燕三条のアトツギベンチャー「ドッツアンドラインズ」は、無人駅でモノづくり工房を展開して職人の後継者育成のきっかけづくりに取り組んでいる企業です。僕たちが開いたミートアップイベントに参加して、事業に対するギアが一段上がったように感じます。
また、一般的なVCではIPOなどによるエグジットを前提とした企業でないと出資が困難ですが、サステナブルに地域の成長を後押ししていくためには、産業と雇用を創出する0→1の事業に挑戦する起業家が必要です。そんな地域起業家を支援するために立ち上げたのが「JR東日本ローカルスタートアップ合同会社」です。ファンドは5年後、10年後のIPOで回収しようという発想ではなく、融資とエクイティの中間のような仕組みを採用しています。何よりも特徴は長い運用期間で、延長ありの20年です。

柴田:「金を出して終わり」では地方はもう絶対に伸びません。地域が必要とする産業や雇用の創出を目指すスタートアップに対してローカルVCが泥臭く踏み込んだ支援をして、エコシステムのつなぎ役を担っていくことが必須だと感じます。
藤田圭:僕たちの投資先の瀬戸内サニー(香川県)という教育系スタートアップの代表は香川の若者の認知度が高いYouTuberで、限られたエリア内ではあるものの、大きな変化をもたらしている好事例です。企業や自治体、大学のメディア運営サポートや動画制作のほか、地元の学校でのアントレプレナー教育にも力を入れています。「瀬戸内サニーだからこそアプローチできる教育現場や若者のコミュニティがある」というブランドが出来上がってきています。
LPに対しては、IPO以前に事業が地域に与える影響が重要であることを説明し、コンセンサスを得ています。「手触り感のある投資」というキーワードが出ましたが、実際にLPが瀬戸内サニーの事業をサポートするなどの双方のコミュニケーションが、経済的リターンでは補えない役割を担っていると感じます。