社会には、起業は若者がやることだという考え方が根強く残っている。そうしたイメージを煽っているのは、20代のうちに大学寮で始めたビジネスを、何十億ドル規模のテック企業へと育て上げたという創業者たちのエピソードだ。そんな話を聞くと、年齢の高い人は、たとえ起業の夢があったとしても、気持ちをくじかれ、格好のタイミングはもう過ぎてしまったような気になってしまうかもしれない。
しかし、現実はまったく違う。50代や60代でビジネスを立ち上げる割合が増加しているだけでなく、若い起業家より、ある程度年齢の高い起業家の方が成功しやすいことが調査で示されている。米カウフマン財団の調査では、最も増加している創業者の年齢層の1つが55歳から64歳までであることと、成功したスタートアップ創業者の平均年齢が45歳であることが明らかになった。こうした数字からも、年齢がイノベーションやビジネス成功の障壁だという通説が正しくないことがわかる。
事実、ビジネスを立ち上げる場合には、若さより経験がものをいうことが多々ある。成功を収めた創業者には、人生が後半戦に入ってから起業に乗り出した人が少なくなく、彼らは、長年積み上げできた知恵やスキル、ネットワークを活用している。
有名デザイナーのヴェラ・ウォンがファッションデザイン分野に足を踏み入れたのは40歳。ファッション誌『ヴォーグ』誌のエディターなどを務めた後のことだった。ハーランド・デイヴィッド・サンダース(通称カーネル・サンダース)がケンタッキーフライドチキン(KFC)を創業したのは60代で、それまでに商売で何度も失敗を重ねていた。
こうした話はみな、チャンスを見極めたり、問題を解決したり、長続きするビジネスを構築したりする上で、人生経験が強力な資産になるという証拠だ。
適切な心構えと強い意志があれば、年齢は、足かせどころか強みになる。起業して成功する夢を追いかけるのに、遅すぎることなどない。