濃紺のシルクウール製コートとペンシルスカート、アイボリーのシルククレープブラウス、そして帽子。すべてニューヨークのデザイナーによるものだった。
特に広いつばの帽子は、その被り方と合わせ、この就任式における彼女の存在感を象徴するだけでなく、意図的なメッセージを放っていると考えさせられるアイテムだった。一部では議論を巻き起こした彼女の装いは、プレゼンスをつくり出すスタイルや信念の表現手段として要注目だ。
アメリカの職人技を称えた装い
この日のメラニア氏の洋服は、ニューヨークを拠点とするデザイナー、アダム・リッペス氏によるカスタムデザインである。ニューヨーク市内で熟練職人たちが手縫いで仕立てたものだ。洗練されたデザイン、構築されたシルエットと、それを完成させている仕立ての良さ、またほとんど色を感じさせない全体像とその佇まいに、厳格さを漂わせていた。リッペス氏はこの特別な装いについて、自身のInstagramでこう述べている。
「大統領就任式の伝統はアメリカ民主主義の美しさを体現しており、本日はファーストレディであるメラニア・トランプ夫人の装いを手掛けるという光栄に預かりました。トランプ夫人の衣装はアメリカ最高の職人たちによって制作され、その素晴らしい仕事を世界に披露できることを誇りに思います。」
この声明は、メラニア氏の装いがファッションとしての美しさだけでなく、アメリカの伝統や職人技への敬意を表していることを示している。

今回世間でも特に帽子が注目された理由には、そのつばの広さと被り方にあった。
彼女の顔の大部分を覆い隠していたことで、表情を最も表す目元がほとんど見えなくなり、一部では「感情を隠している」「冷たさを演出している」「葬儀のようだ」という批判も上がった。また、式典中にトランプ大統領がメラニア氏の頬にキスを試みたものの、帽子のつばが妨げとなり未遂に終わった場面は、SNS上で話題となった。「彼女の帽子がトランプ氏への無言の拒絶を象徴している」といった皮肉交じりのコメントや、「(その帽子が)ピザハットのロゴに似ている」といったジョークも飛び交った。
