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テクノロジー

2025.02.06 14:15

日本科学未来館「インターネット物理モデル」常設展終了─惜しむ声、署名活動も

日本科学未来館の人気常設展示「インターネット物理モデル」

日本科学未来館の人気常設展示「インターネット物理モデル」

日本科学未来館の人気常設展示「インターネット物理モデル」をご存じだろうか。

同館のページにある説明から引用しよう。

「(このモデルは)インターネットで情報が伝わるしくみを、白と黒のボールの動きで視覚化した展示です。

白と黒のボールは、実際には目に見えない「0」と「1」の信号の代わりです。インターネットへ放った情報は、タワー(ネットワーク上のルーターに相当)を中継して、相手の端末に届きます。 2017年6月のリニューアルで、「文字」だけでなく「音」「動き」などの情報も扱えるようになりました。今日の社会で人や情報ばかりでなく、モノ、環境、サービスなどをもつなぐインターネットが、世界に開かれた重要なコミュニケーションツールであることもあらためて実感できます」

同館HPより

同館HPより

また監修者の1人である計算機科学者、工学博士の村井純氏(慶應義塾大学名誉教授。JUNET設立者、WIDEプロジェクトFounder)は、同じく日本科学未来館のHP上にアップされた動画で以下のように説明する。



「インターネットは誰かが中央で管理しているのではない。世界中に分散しているシステムが、それぞれが連結してパケットを届けるようになっています。

(…)みんな一人一人が手をつないでいくと、最後は地球全体を覆うことができる、そういう理念でインターネットはできていて、そして実際に今は、その理想は実現できたと思います」

だがついに、24年間続いたこの人気常設展示の撤去が決まり、展示は1月13日で終了した。撤去の理由は物理的な老朽化と、新展示へのスペース譲渡の必要に迫られたことだった。

——愛されたこの展示の撤去の報に触れた人々から惜しむ声が上がるまでに、間はなかった。展示最終日翌日の14日、オンライン署名サイト「change.org」で「日本科学未来館のインターネット物理モデル廃棄を止め、再利用で次世代に繋げよう」という署名ページが開設されたのである(※1/24に発起人から未来館に署名が提出された)。

以下、同モデルの「撤去」と署名活動について、以下、同モデルのオリジナル制作者の1人、産業技術総合研究所主任研究員でメディアアーティストの江渡浩一郎博士*のXへの投稿("「後世に残すべき文化資産とはなにか」について議論するべき")を紹介する。


江渡浩一郎博士◎国立研究開発法人産業技術総合研究所 人間拡張研究センター 共創場デザイン研究チーム主任研究員、ZEN大学教授(就任予定)、デジタルハリウッド大学大学院 特任教授、人工知能学会 理事、JST CREST領域アドバイザー。

インターネット物理モデルの廃棄に関する署名について、ありがとうございます。とてもうれしいです。作者の立場で言いだせることではないので、第三者の方が言ってくれたことはありがたく、感謝しています。そして、賛同します。みなさんにもぜひ署名してほしいので、リプライにリンクを貼ります。

作者の立場として、言うべきことがあると思っています。私は、この決定までの経緯について、未来館のとった行動は適切なものだったと思います。撤去については私たちにはだいぶ早い段階から知らされていました。また、移設についてもずいぶん探してもらっていました。もちろん作者側でも探しました。

その努力が叶わず、行き先は見つからなかったのですが、最後に作者が集まって動画を撮る機会を作ってくれるなど、私たちとのコミュニケーションについて、最大限配慮していただいていたと感じています。

なによりも、24年間続いた展示というのは、未来館で唯一でした。他の展示はどんどん撤去されていっているので、毎年「そろそろかな?」と思っていました。私としては、ついにその日が来たのだと思っています。意外ではありませんでした。

むしろ、撤去するべきではないという声が第三者の方から上がってきたことは、意外でした。「日本の大切な文化資産」とまで言っていただけたのは、とてもうれしいです。

たしかに、移設可能性については検討したが、撤去した上で保管する案は検討しませんでした。保管するのであれば、費用や期間についての疑問が出てくる。少なくとも作者の立場から言いだせることではない。未来館が限られたリソース(予算、場所)の中で最善を尽くそうとしていることは理解しています。

浅川さん(編集部注:日本科学未来館館長の浅川智恵子氏)、高木さん(同:同館副館長の高木啓伸氏)は、私と同じ分野の尊敬する研究者です。ご迷惑をおかけするようなことはしたくない。それは理解してほしいです。

その上で、私はこの提案に賛同し、署名しました。みなさんにもぜひ署名してほしいと思っています。それは、「後世に残すべき文化資産とはなにか」について議論するべきだと思ったからです。少なくとも議論することには価値があると思っています。

もしよろしければ、署名と併せて、みなさんがインターネット物理モデルに関して感じたことや考えたことも共有していただけたらうれしいです。24年間支えていただいた感謝とともに、未来につながる議論の場になればと願っています

※なお展示終了に際しては江渡博士はじめ関係者が招待され、お別れの場が設けられた(日本科学未来館の公式Xより)

また今回、Forbes JAPAN読者、ならびに同展示のファンのために、日本科学未来館からのメッセージをいただいた。次ページで紹介する。

次ページ > 日本科学未来館からのメッセージ

構成=石井節子

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