昨年、日本全国の空き家総数は900万棟と過去最多を記録。「空き家問題」はますます重要な社会問題になっていくことが想定される。
そんな日本の空き家に外国人が熱視線を送っているのはご存じだろうか。
昨年4月17日に米ニューヨーク・タイムズでも、外国人が25000ドルで日本家屋を購入したことが報道された。
「お寺の株」1株3万円台で1000株完売、8割は海外投資家、利回り「9%」
この動きは民家だけに留まらない。担い手がいない“空き神社仏閣”にも外国人が関心を寄せている。昨年6月には「小口投資」でお寺の株主になれる新事業「PlanetDAO(プラネットダオ)」がスタート。神社仏閣を民泊化し「空き寺」を持続可能な形で存続させる新事業だ。
東京のスタートアップ企業が地域と連携し、昨年5月中旬に1株3万円台で売り出したところ、たった1カ月半で1000株が完売。合計3450万円が集まったという。驚くのは株主応募枠の8割が海外投資家だったこと。出資者は30代〜40代が多く、中には100株単位で購入する人もいたという。国別で見ると多い順に、アメリカ、シンガポール、フィリピン、イギリス、香港、タイと続く。
さらに驚くべきなのは、利回りの高さだ。この新事業の第一弾として販売された「楞厳寺(りょうごんじ)」の例を挙げよう。一般的な不動産投資の利回りは4〜5%台だが、楞厳寺は約2倍の9%に設定している。
高い利回りを出せる理由は2つある。1つ目は、空き寺を活用するため、土地代や建物代の初期費用がかからないこと。2つ目は、従来の組織形態と異なり、DAO(Decentralized Autonomous Organization)という組織だということ。
DAOとは分散型自律組織、特定の所有者が存在せず、参加者同士がプロジェクトを推進する組織なのが特徴。出資者自身が広告塔になって友人が予約すれば、本来かかる宣伝広告費や予約サイトへの支払い手数料を削減できる。このように、事業費を抑えられるメリットもある。

その「楞厳寺」は、全国で空き家率2位の和歌山県の南東に位置する人口1.4万人の那智勝浦町の色川地区にある。180年前に建てられたこのお寺は、2021年に国の登録有形文化財にも登録された地域を象徴する建物でもある。とはいえ、現在は住職が居住していない「無住職寺院」ゆえ、持続可能な運営が地域課題になっている。那智勝浦町の5つの寺をたった1人の住職が任されているのだとか。
