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経済・社会

2025.01.21 17:15

「トランプが嫌いだった3首脳」から学ぶトランプ2.0との付き合い方

Photo by Anna Moneymaker/Getty Images

そうは言ってもトランプ氏だ。突拍子もない発言で、相手を困惑させることがしばしばある。2019年5月の日米首脳会談の際、トランプ氏は「我々はホルムズ海峡から一滴の石油も輸入していないが、守っている。日本はその間、トヨタを世界中に売って儲けている」と言い始めた。勢いづいたトランプ氏は「日本は在日米軍の駐留経費を3割しか負担していない」とも語った。安倍氏が「それはドイツのケース。我々は74%負担している」と反論すると、トランプ氏は「大丈夫だ。ドイツと韓国からは搾り取る」とも語った。安倍氏が「そうではなく、我々は3割ではなく、74%を負担している」と伝えると、トランプ氏は「わかった」と答えたという。

この問題では当時、マティス国防長官らが日本の主張を支持してくれたが、第2次トランプ政権では、日本の味方をしてくれそうな人物は大幅に減りそうだ。第2次政権では、クシュナ―氏に代わり、ドナルド・トランプ・ジュニア氏が非公式な外交窓口としての役割に意欲を示している模様だが、日本には関心を持っていないという。トランプ氏は昨年11月25日に、カナダからの輸入全品に25パーセントの高関税を科すと宣言したが、その約2時間後に、トルドー首相はトランプ氏との電話会談を行った。日本にはカナダのような潤沢なコミュニケーション・チャンネルはないようだ。

一方、カナダはこうした米国の関税措置に対する報復関税として米ケンタッキー州から輸入するバーボンや、米フロリダ州から輸入するオレンジ・ジュースにターゲットを定めているとも言われる。輸入規模は大きくないが、ケンタッキー州は米上院の大物、ミッチ・マコネル議員、フロリダ州はマルコ・ルビオ国務長官のそれぞれ地元だ。トランプ氏に影響力がある周辺から絡めとろうとする戦略なのだろう。

日本外務省内では今、トランプ外交にどう対抗すればいいのか、新たな外交戦略を模索する協議が続いている。幹部の一人は「トランプ氏があからさまな実利外交を展開する以上、我々も理念や過去にばかり縛られているわけにはいかない」と語る。安倍政権の一つの成果だった「自由で開かれたインド太平洋構想」(FOIP)についても、「賞味期限はすでに切れた」という声も出ている。同幹部は「FOIPをあと5年くらい唱えつつ、日本の利益を重視した新たな外交を追求しなければならない」と語った。

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文=牧野愛博

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