ただ、トランプ氏を巡っては第1次政権末期の2020年12月、物騒な動きもあった。米ニューヨーク・タイムズなどによれば、ホワイトハウスで同月18日、20年大統領選の結果を認めないトランプ氏を支援する会議が開かれた。そこで、採用されなかったが、戒厳令の発動によって軍を動員することが提案されたという。トランプ氏は当時、X(旧ツイッター)への投稿で、一連の報道をフェイクニュースだとして否定した。この頃、不正選挙説を信じるトランプ氏支持者らの間で、同氏が戒厳令を出して軍を動員するとの偽情報がSNSを通じて拡散した。
また、米ワシントン・ポストは21年9月、ミリー米統合参謀本部議長が20年11月の米大統領選の直前と、21年1月の米議会議事堂襲撃事件直後に、中国共産党中央軍事委員会連合参謀部の李作成参謀長に対し、トランプ氏が中国に戦争を仕掛ける恐れがあると2回も非公式ルートで連絡していたと報じた。ミリー氏は米軍幹部らに対し、トランプ氏が中国への核攻撃を命じた場合はミリー氏に知らせて判断を仰ぐよう命じた。CNNによれば、2020年に米国の一部の都市で大規模な抗議デモが発生した際、軍による鎮圧を求めたトランプ大統領に対し、ミリー氏は繰り返し拒んだという。ミリー氏は23年9月の退任式で「我々は独裁者になりたいと思う者に誓いを立てたりはしない」とも語った。
韓国の尹錫悦大統領が昨年12月3日に戒厳令を出した際、もっとも厳しく批判したのが米国だった。米国務省のキャンベル副長官は戒厳令について「深刻な誤った判断」と指摘。「非常に問題があり、違法だ」とまで踏み込んだ。日本政府関係者は「普通、他国の内政でもあり、重大な関心を持って注視している、くらいが穏当な表現。キャンベルの発言は、明らかな不満の表明だった」と語る。