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サイエンス

2025.01.18 16:00

「妊娠で脳はダイナミックに変化」一時的に記憶力や認知力が低下 研究結果

妊娠前から出産後2年間にわたって脳の変化を追跡した研究により、妊娠という人生の一大転機が脳に及ぼす影響が明らかになった(Shutterstock.com)

妊娠前から出産後2年間にわたって脳の変化を追跡した研究により、妊娠という人生の一大転機が脳に及ぼす影響が明らかになった(Shutterstock.com)

「マミーブレイン」とは多くの女性が訴える、産後、一時的に思考力や記憶力が低下した状態を指す。よって育児中の母親が鍵を失くしたり約束を忘れたりしても、安易に責めてはいけない。マミーブレインは出産した母親の約8割に起こる、ごく一般的な現象なのだ。よくある症状としては、短期的な記憶喪失、時間や場所の認識があやふやになる見当識障害、集中力の低下など。テレビやネットで笑いのネタにされることも多い、いわゆる「産後ボケ」だが、近年の科学的研究で、マミーブレインは寝不足や育児ストレスいった言葉では片づけられない、人間の神秘に触れる現象であることが明らかになった。

『Nature Neuroscience(ネイチャー・ニューロサイエンス)』誌に発表されたこの研究では、妊娠前から出産後2年間にわたる脳の変化を詳細に記録。導き出された神経学的な洞察は、妊娠という極めて重要な転換期における脳の変化を明らかにし、神経可塑性(脳が構造や機能を変化させる性質)の概念を再定義するものとなった。この研究は今後、産後うつのメカニズムを解き明かし、妊娠中・出産後の女性の健康をサポートする新たな指針の手がかりとなるかもしれない。

初出産を体験する女性の脳の変化を捉えた26枚のMRI画像を通じて、私たちは脳という最も重要な器官の驚くべき適応性を垣間見られる。そこには女性の脳が母親になるために進化を遂げる、神秘的な過程が映し出されていた。

妊娠が脳をどのように変化させるか

研究では脳を精密なMRI画像技術で週ごとにモニタリングし、妊娠中および出産後の変化を追跡している。なかでも注目すべき変化は、大脳皮質のほとんどの領域で灰白質の体積と皮質の厚みが広範囲にわたって減少したことだ。平たく言えば、妊娠により脳が小さくなったのである。そして脳の外層はほとんどの領域で薄くなり、妊娠していない女性に通常見られるケースより、はるかにダイナミックに変化した。興味深いことに、これらの変化の一部は出産後2年間にわたって続いた。
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翻訳=猪股るー

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