経営・戦略

2025.01.15 08:00

TikTok買収に向け約3兆円調達、70歳の富豪が描く「分散型SNS」

投資家のフランク・マッコート

保有資産2200億円の富豪

2012年にロサンゼルス・ドジャースを売却したマッコートは、その売却から得た約8億5000万ドル(約1339億円)を自身のマッコート・グローバルの投資に用いてきた。彼は、スポーツや不動産、テクノロジー、メディアなどの幅広い分野に投資を行った後の2023年1月に、プロジェクト・リバティに専念するために同社のCEOを辞任した。フォーブスは、彼の保有資産を14億ドル(約2200億円)と見積もっている。

ニュースサイトのSemaforによると、マッコートは財団や年金基金などの投資家から資金を調達して、TikTokのユーザーデータを、個人がよりコントロールできるプロトコルに移行させることを目指している。

彼のこの計画は、他のハイテク大手との競争に直面する可能性があり、彼自身も成功の可能性が低いことを認識している。「最終的に、この取り組みが成功する保証はない」と、マッコートは昨年述べていた。

マッコートの起業家としてのルーツは、1893年に曽祖父がボストンで建設業を営むマッコート・カンパニーを設立したことにさかのぼる。ジョージタウン大学に進んだ彼は、1975年に経済学の学位を取得した後、マサチューセッツ州に戻り、1980年代から不動産開発を行った。

マッコートは、2001年にボストン・レッドソックスを買収しようとしたが、競合の億万長者に競り負けた。その数年後の2004年、彼はロサンゼルス・ドジャースを3億7100万ドル(約578億円)で買収したが、彼のドジャースのオーナーとしての在任期間は、2011年にチームが連邦破産法第11章の適用を申請したことで幕を閉じた。その翌年、マッコートはドジャーズを当時のスポーツ界で史上最大の22億ドル(約3429億円)で売却し、税金や離婚訴訟費用を差し引いて約8億5000万ドル(約1324億円)の現金を手に入れていた。

彼は、その後もスポーツ関連の投資を続け、2016年にはフランスのサッカーリーグのオリンピック・マルセイユを約5000万ドル(約77億円)で買収した。マッコートはまた、個人信用に特化した投資会社MGGインベストメント・グループを設立し、2016年に3億ドル(約467億円)だった運用額を2023年には56億ドル(約8729億円)にまで増加させた。

ハイテク大手への対抗心

彼のプロジェクト・リバティの立ち上げのルーツは、2013年に母校のジョージタウン大学に1億ドル(約155億円)の寄付を行い、同大学に所属する公共政策大学院のマッコート・スクール・オブ・パブリック・ポリシー (MSPP)の設立を支援したこにさかのぼる。

マッコートは、同校の設立にあたって、研究者がアクセスしたいデータの多くが利用できないことに気づき、データの所有権に目を向けるようになった。「学内には巨大なデータ研究所がありますが、彼らが本当に必要としているデータは、ハイテク大手によって管理されているため、利用できないことがすぐに分かりました」と、彼は述べていた。

2021年、マッコートはプロジェクト・リバティを立ち上げることを決意した。このプロジェクトは、人々が自分のデータやデジタル・アイデンティティのコントロール権限を強化することを支援しようとしている。彼は、このプロジェクトの活動を昨年3月に出版した著書の『Our Biggest Fight: Reclaiming Liberty, Humanity and Dignity in the Digital Age(我々の最大の闘い:デジタル時代に自由と人間性、尊厳を取り戻すための闘争)』で詳しく紹介している。
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編集=上田裕資

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