商務省はとくに、中国製ドローンの使用は「米国における情報通信技術・サービスの設計、完全性、製造、生産、流通、導入、運用、保守を妨害もしくは破壊する過度なリスクをもたらす」のかどうか、あるいは「米国の重要インフラやデジタル経済の安全性や強靭性に破滅的な影響を与える過度なリスクをもたらす」のかどうかを見極めようとしている。
最大の問題は、ドローンがインターネットを通じて定期的にメーカー側と通信したり、メーカー側が定期的にファームウェアの更新を行ったりしていることだ。
このためメーカーは、さらにはメーカーを介して中国政府も、ドローンがいつどこを飛行したかを示す飛行ログを入手可能なはずだ。理論的には、スパイ目的でドローンから画像をダウンロードすることも可能かもしれない。
現実にもっとあり得そうなのは、ファームウェアの更新に際して、特定のエリアにドローンが侵入できないようにする「ジオフェンシング」情報が追加されるというものだ。ジオフェンシング機能では通常、空港のようなセキュリティー上重要な施設からドローンを遠ざけるが、より広い範囲を遮断することもできる。DJIは2017年、過激派組織「イスラム国(IS)」が同社製ドローンで爆弾を投下したという報告を受けて、
イラクとシリアの多くの場所にジオフェンスを張った。同様のアップデートを施せば、米国内でも中国製ドローンを事実上、飛行できなくすることも可能かもしれない。
ホビー用ドローンは問題ではない。ドローンはスマート農業での活用も広がっていて、農地に関するデータを日々提供している。また、パイプラインや送電線、橋といったインフラの点検でも活躍しているほか、山火事の追跡や、洪水をはじめとする自然災害の監視でも重要な役割を果たすようになっている。さらに、ドローンは医薬品や貨物の配送にも使われ始めている。これらすべての分野で、ドローンの利用は向こう数年でさらに増えていくだろうし、それに伴ってドローンへの依存度はますます高まっていくに違いない。これらの能力を、敵対者が意のままに無効にできるような状況は誰しも望んでいない。
DJIをはじめとする中国のドローンメーカーは、中国政府に支配されていないと主張している。だが、米国の新政権は今年3月にも、そうした主張を退けて、中国製ドローンの米国への輸入を禁じるルールを課す可能性がある。