経済・社会

2025.01.09 16:15

オードリー・タン×Sakana AI伊藤錬「プルラリティ」で切り拓くアジア的テクノロジーの未来

アジア視点で語るSakana AI

伊藤氏は、オードリーの基調講演を聞いた上で、Sakana AIの紹介を以下のように行った。「Sakana AIでは、オープンソースのエコシステムを活用することで、少ないリソースでも強力なAIモデルを構築しています。私たちの目標は、巨大な予算をかけた単一のAIモデルを追求するのではなく、多様な小規模モデルを統合し、コミュニティと協力しながら、持続可能なソリューションを提供することです。」
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例えば、彼らはオープンソースで公開されている小さなAIモデルを数百種類統合することで、GPT-3.5に匹敵する性能をわずか24ドルというコストで実現しているという。このアプローチは、シリコンバレー的な巨大投資に頼らない「アジア的な方法論」とも言えるだろう。さらに、伊藤氏は次のように述べた。

「技術は人々を疎外するものではなく、つなぎ、力を与えるものであるべきです。特にオープンソースの哲学を活用することで、多様性を保ちながら強力なシステムを構築することが可能です。」
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一方、オードリー・タン氏は、台湾での政策実践を例に挙げ、テクノロジーがもたらす分断をどのように協調に変えるかを語った。

「テクノロジーが引き起こす社会的な分断に直面したとき、私たちはその力を利用して対話の場を作り出しました。それは冷たい効率性を追求するだけではなく、人々の共感や協力を引き出すためのツールとして活用することを目指したのです。」

このように、台湾の取り組みとSakana AIのアプローチは、いずれも「協調」を中心に据えたテクノロジー活用の新しい形を示している。特に、伊藤氏の語る「グローバルに適用可能でありながら、地域に根ざした技術」は、日本やアジア全体が持つ強みを生かしたモデルとして注目に値する。

彼は次のように説明している。「私たちはまず、グローバルに適用可能な会社と技術を構築しました。その後、日本を選び、この技術を日本固有の課題に適用しています。そして、一旦初期の成果を得られれば、すぐに国際市場にも展開できるのです。」

伊藤氏のこのアプローチは、地域の課題に根ざしつつも、国際的な展開を念頭に置いたモデルであり、特にアジアが持つ多様性という強みを活かしている。彼はさらに次のように述べている。「アジアの強みはその多様性にあります。私たちは、グローバルな視点を持ちながら、地域固有の課題に応じた解決策を提案できる立場にいます。」

このパネルディスカッションを通じて浮かび上がったのは、アジア的な思想を軸にした「対話」と「協調」、そして「プルラリティ(多元性)」の可能性である。分断ではなく、多様性を尊重しながら新しい未来を構築していくという発想は、現在のグローバルな課題に対する一つの解決策を提示していると言えるだろう。

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