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2024.12.19 08:15

インバウンドで儲かった店が導入した2つのものとは

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不景気やコロナで危うかった状態の小売店や飲食店が、このごろのインバウンド需要で業績をコロナ前の水準に戻したという話はよく聞く。しかし、倒産件数も増えている。原因は単純ではないだろうが、インバウンドでうまく売り上げを伸ばした事業者の多くは、2つの対策でインバウンドを呼び込んでいた。

経済産業省が2024年11月に公開したレポート『2024年上期小売業販売を振り返る;旺盛なインバウンド需要、物価高で揺れる消費動向をみていきます』によれば、百貨店、スーパー、専門量販店の売り上げはどれも前年を上回っている。しかし同時に、原材料費の高騰、人手不足などにより倒産する店舗も多い。目の前の外国人観光客をうまく呼び込めたなら、状況は変わったかもしれない。

そこで、通訳、翻訳、多言語コンタクトセンター事業などを展開するBRIDGE MULTILINGUAL SOLUTIONSは、インバウンドで増収を成功させた小売店、飲食店の経営者および役員103人を対象に調査を実施した。それによると、増収前、半数以上の事業者が原価の高騰に頭を悩ませていて、人材、リピーターの獲得、他店との差別化、そしてインバウンドの集客を課題と考えていた。

そこから増収に転じた秘訣を聞くと、もっとも多かったのがクレジットカード決済への対応だった。続いて、通訳・翻訳ツールの導入、多言語の案内の設置、日本文化を反映した商品や体験、多言語の接客マニュアルの整備などとなっていた。なかには、ロールプレイ研修の徹底、外国人スタッフの採用、メニューの英語表記という意見もあった。

クレジットカード対応と通訳ツールの導入は、どちらも4割近い店舗が実施していた。外国語対応はハードルが高いように思われるが、今ではスマホで気軽にAI通訳が使える時代だ。キャッシュレス決済システムも、以前にくらべてずっと導入しやすくなった。

もっとも、通訳ツールには課題もある。通訳ツールを導入した事業者の約半数は、「不自然な文章が出力されてしまうこと」を心配している。訳の正確さや微妙なニュアンスの表現が不安だという意見も少なくない。だが、今の通訳ツールの精度はその程度だと、相手も納得して使っているはず。あとは人間同士、笑顔や筆談のコミュニケーションで補っていけば、そのやりとりが日本での愉快な体験として、お客さんの思い出にもなるだろう。

笑顔では対応しきれない専門的な商談の場合は、AIのほかに人間の通訳が電話で対応するハイブリッド型の通訳サービスもある。こうしたツールを積極的に取り入れることで、店の前を外国人観光客が素通りするか、足を止めるかの違いにつながるというこわけだ。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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