CDSは「過去2、3カ月、敵の司令部はポクロウシク方面で前進を遂げるために、増援ではなく現存戦力の再編成によって高い作戦戦力密度を維持しなくてはならなかった」と解説している。
ロシア軍が果たしてポクロウシクを攻略できるほどの戦闘力を保有しているのかは、近々わかるだろう。CDSは「来るポクロウシク攻防戦は敵による(今年の)攻勢作戦のクライマックスになる」と述べている。
いずれにせよ、ロシア軍は強大な戦力を有した状態でポクロウシクに迫っているわけではない。ロシア軍が毎月失っている人員数は新兵の採用数を数千人上回っている。現代的な戦車やその他の戦闘車両の在庫は乏しく、カーゴトラックやバンに乗って攻撃に向かわざるを得ない部隊が増えている。
さらにここ数日でシリアの残忍なバッシャール・アサド政権があっという間に崩壊し、同国沿岸部などにあるロシア軍基地に多数の軍人や最新装備が取り残されるという事態にもなった。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ポクロウシクへの攻撃準備を進める自軍兵士らに強さと自信を示さねばならないまさにその時に、メンツを潰される格好になった。
もっとも、状況は近く変わるかもしれない。来る2025年、ロシア・ウクライナ戦争をめぐる政治情勢は一変する可能性がある。米国で1月20日に就任するドナルド・トランプ次期大統領の新政権は混沌として予測不可能なものになるだろうし、ウクライナにとって死活的に重要な米国の援助を打ち切るか大幅に縮小するおそれもある。ドイツでは2月に連邦議会(下院)選挙が予定されている。フランスでも発足して間もない内閣が総辞職に追い込まれるなど、政治の先行きが不透明になっている。
政治情勢の変化はウクライナを害し、ロシアを利するかもしれないし、その反対になるかもしれない。こうした不確実性は、ロシア政府もウクライナ政府もひしひしと感じているはずだ。
ただ、違いもある。ロシアは達成が遅れ続けている目標をなお追求し、大きな犠牲をともなう攻勢を続けようとしている。それに対してウクライナの最大の目標は、ロシアが人員や装備、時間を使い尽くしていくなか、ただ生き延びることだ。
(forbes.com 原文)