22年の2.2倍に膨れ上がったのは、派閥裏金事件を受けて23年から報告書に全額記載するようになったためと見られる。また、離党した世耕弘成氏の「紀成会」が、一部の贈答品の支出に関する金額や日付などを「不明」と記載していたことも判明した。裏金問題の全容解明は、まだまだ先のようだ。
兵庫県知事選をめぐって、16日には公職選挙法違反容疑の告発状が受理されるなど、政治とカネの問題は中央政権だけでなく地方自治体においても同様である。
今回紹介する映画『はりぼて』(2020年)は、富山市議会に巣食っていた数々の不正が、ローカルテレビの若手記者の丹念な取材によって次々と明らかにされ、実に14人もの議員が辞職に追い込まれていくというドキュメンタリー。
当時、まだ歴史の浅かった地元のチューリップテレビのキャスター兼記者・五百旗頭(いおきべ)幸男と、相棒の記者・砂沢智史の共同監督作品で、公開後、話題を呼び異例のロングランとなったことで知られる。
政治ドキュメント、あるいは政治ドラマと言えば、重苦しく深刻なムード、立ちはだかる権力の壁、奮闘し苦悩する記者‥‥といったイメージがつきまとうが、このドキュメンタリーのテイストとはそれらとはやや異なっている。
議員報酬を10万も値上げ?
冒頭、雪を頂いた立山連峰を背景にして、非常にモダンなデザインの富山市庁舎が映し出される。そこに流れてくるのは、伊丹十三監督の『マルサの女』のテーマ曲をどこか彷彿とさせる音楽。重いドキュメントと言うより、コメディドラマでも始まりそうだ。膨大な量であっただろう取材データが手際良く編集されているお陰で、展開はメリハリが効いてテンポも良く、何度か失笑させられる場面もある。しかしその笑いは、後半になってなんとも苦いものになってくる。
舞台は2016年、有権者に占める自民党員の割合が十年連続一位の保守王国・富山市。問いかける記者に大きな背を向けてずんずん歩いていくのは、富山市議会の「ドン」と言われる中川市議である。
60万円の議員報酬について10万もの値上げを主張している彼は、その理由を問う砂沢記者に対し、「議員は退職金もない」「年金もわずかだ」などとダミ声の身振り手振りで言いくるめてしまう。こりゃこの先が厄介そうだと思わせるプロローグだ。