3. 摩擦を導入する
悪習を断ち切れずに苦労している人はみな、いつでもどこでもこうした習慣を実践できるよう準備しているものだ。アルコール依存者は酒を切らさないよう常備しているし、喫煙者はタバコの箱をいつも肌見離さず持ち歩き、頻繁にスナックを食べる人はいつもどこかに隠しておく。2022年に学術誌のAnnual Review of Psychologyに掲載された論文によれば、「習慣は、環境文脈における、頻繁かつ一貫した実行に依存する」。言い換えれば、習慣が習慣になるのは、いつでもそれができるからだ。
楽しい(ただし不健康な)対象物や状況に、いつでも即座にアクセスできる状態に身を置けば、それに手を伸ばすことは容易に習慣化する。いつでもどこでも手に入るという事実を認識することが、その行為を強化してしまうのだ。
したがって、不健康な習慣を断ち切る際には摩擦が重要であると、ウッドは強調する。クッキー缶を子どもの手が届かない高い棚の上に隠すように、行為の実行をできるだけ難しくする「摩擦」を導入することが、悪習にとらわれないためには重要なのだ。
例えば、あなたの悪習は、寝る前にベッドの中で際限なくソーシャルメディアをスクロールすることだとしよう。通知をちょっと確認するだけのつもりが、いつの間にか何時間もブラウズしてしまい、睡眠時間が削られて、翌朝のあなたはぼうっとするし無気力になっている。この悪習を断ち切りたくても、手がとどく場所にスマートフォンを置いていては、スクロールの誘惑に負けてしまうのは無理もない。
この悪習に摩擦を導入するには、意図的なアプローチが必要だ。スマートフォンの充電は別の部屋で、例えばリビングルームやキッチンカウンター上で行おう。そうしておけば、ベッドに入った後にスマートフォンを操作しようと思ったら、起き上がって歩かなくてはいけなくなる。つまり、努力が必要な状態をわざとつくり出すことで、夜中にスクロールにふけるのを諦められるようにするわけだ。
こうして、寝る前のルーティンの中に、健康的な習慣を意識できるような物理的障壁を設けることで、安眠が得られやすくなるだろう。時とともに、みずから導入した摩擦が、文字通りあなたを悪習から遠ざけてくれるのだ。
(forbes.com 原文)