経営・戦略

2024.11.25 14:15

業界の常識を変えたアプリ GO 「タクシー王」の祖父に託された精神


──慶応大学を卒業し、アメリカに留学した後、世界ナンバーワンのコンサルティングファーム「マッキンゼー」に入られたんですね。
 
幼稚舎からずっと慶応で、本当に勉強や受験をまともに1回もしてないのです。高校・大学と体育会系スキー部で、右脳系の気合と根性は鍛えられた気がします。
 
でも、さすがに「気合と根性だけで社長ってやばくね?」と思って、左脳を鍛えるような手段としてMBAっていうバッチを見つけ、大学1年生ぐらいから卒業後はビジネススクールに行くことは決めていました。
 
それは日本交通の社長になるためです。私の祖父が創業した30歳までは「外で修行」。30歳からが本番と捉えていました。

アニマルスピリット丸出しの祖父


 ──お祖父さまは、どのような経歴だったのでしょう。
 
もともと鉄道の整備をしていたので、1920年代の最先端テクノロジーの自動車の整備もできると思い、自動車整備もしていました。すると、「川崎造船の運転手として行け」と言われたようです。
 
当時の運転手は結構高給取りで、川崎造船に10年間勤めました。ここは祖父のポジティブなとこですが、「後ろに乗せている日本を代表する大金持ちと、イチ運転手の自分。人間としてそんな大きな差はないんじゃないかと思った」と。運転手って、結構プライベートとかが分かりますから。
 
──大金持ちも外面はすごいけれど……というわけですか。
 
中身は、人間臭くて、怒ったり、泣いたり、いびきかいたりね。それで、自分にもできるかもしれないと思って、30歳で独立したらしいです。
 
タクシーの行灯を作ったり、アメリカの状況を見てどんどん輸入したりして。当時のベンチャーですよね。しかも、ある時期から自動車に関する競合他社が一気に増えてきた。すると、周り中に声をかけて買収にかかりました。
 
──行動力がありますね。
 
やっぱりワイルドだし、「アニマルスピリット」丸出しです。今、祖父がもし生きていたら、「一朗、お前まだタクシーやってんの?」って鼻で笑われるかもしれません。
 
もしくは「とっとと買収して、何かもうWeb3でもやんなきゃ」みたいに言われるんじゃないかって。
 
そうした祖父のマインドを考えると、もういくら変えてもいい、むしろ変えないと祖父に失礼だと思うようになりました。

3代目にはいきなり「ガンダム」 

──「アニマルスピリット」という感覚があるんですね。
 
3代目になると、多くの創業家社長は牙を抜かれがちです。敷かれたレールで、身内と集まっていると、それでいいような感じになります。これが危ないと思います。
 
──3代目や4代目の経営者で集まると、そうなりがちですか。
 
友達としてご飯を食べに行ったり、旅行に行ったりするのは最高です。でも、それでいい感覚に陥っちゃうんですよね。
 
だから、2代目や3代目の継承者に必要なのは、やはりアニマルスピリットです。それは自然には身に付かない。ビジネスの世界は弱肉強食で、ベンチャーは最初に丸腰で戦場に行って、落ちている剣を拾って戦うところから始まります。
 
でも3代目は、じいちゃんの基盤を引き続いだら、そこにガンダムがあって、いきなりガンダム乗って「アムロ行きます」って、周りをケチらせます。それぐらい、既存ビジネスの有無で全然違います。
 
その環境をいかにアニマルスピリットで「抜けるか」というのが大きな命題だと思いますね。
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