宇宙

2024.11.22 10:30

火星の謎の硫黄石が主役、NASA探査車の息をのむパノラマ画像が公開

NASAの火星探査車キュリオシティが2021年11月20日、ラファエル・ナバロ山の近くで撮影した81枚の画像を合成して作成した自撮り画像の一部(NASA/JPL-Caltech/MSSS)

もしNASAの無人探査車キュリオシティが、火星から手紙を書いて送ることができたら、最近の手紙には次のように書かれているだろう。「親愛なる地球のみなさん。すごい景色でしょう! あの手つかずの硫黄の岩石をご覧ください。間もなく先へ進みます。ご一緒できればいいのですが!」

NASAのジェット推進研究所(JPL)は18日、火星のゲディズ峡谷の流水地形と呼ばれる興味深い地域を撮影した目を見張るような360度パノラマ画像を公開した。この地域は、火星の水の歴史を物語っており、硫黄の結晶をめぐる地質学上の大きな謎の現場でもある。

火星のゲディズ峡谷地域を捉えたパノラマ画像。NASA探査車キュリオシティが11月2日に撮影(NASA/JPL-Caltech/MSSS)

火星のゲディズ峡谷地域を捉えたパノラマ画像。NASA探査車キュリオシティが11月2日に撮影(NASA/JPL-Caltech/MSSS)

キュリオシティは2012年から火星のゲールクレーターを探査している。クレーターには巨大な中央山のシャープ山がある。キュリオシティはシャープ山の麓周辺を移動しながら、太古の昔の火星が微生物の生息に適した環境だった可能性があるかどうかを解明するための調査を実施してきた。

ゲディズ峡谷の流水地形は、シャープ山の山麓地帯にある。現在は乾燥した場所だが、過去に水が豊かな時代があったことを示す証拠がある。「山のより古い地層はすでに乾燥した気候で形成されていたが、気候の変化に伴って時折この地域を水が流れていたことを、流水地形は示唆している」とNASAは説明している。河川や土石流、雪崩などが、この地形の外観を形成した要因の1つとなっている。科学者は火星の水の歴史に特に関心を寄せている。水は、現在知られている形態の生命にとって重要な要素だからだ。

ゲディズ峡谷の流水地形の全景を捉えた360度パノラマ画像は、YouTube上で見ることができる。



キュリオシティは今年、ゲディズ峡谷で純粋な硫黄の結晶という驚くべき発見をした。探査車が轢いた岩石が割れ、この結晶が露出したことから、研究チームは謎の解明に乗り出したものの、いまだに明確な答えは出ていない。「硫黄がそこで形成された理由に関して、研究チームはまだ説明できていない。地球では、硫黄は火山と温泉に関連しているが、シャープ山にはどちらの原因についても、それを示す証拠がない」とNASAは指摘している。キュリオシティのプロジェクトサイエンティストのアシュウィン・バサバダは、これを「おもしろい謎解き」と表現した。

火星のゲールクレーター内にあるゲディズ峡谷の河川床跡沿いに広がる、明白色の硫黄石が散らばる一帯を捉えたクローズアップ画像(NASA/JPL-Caltech/MSSS)

火星のゲールクレーター内にあるゲディズ峡谷の河川床跡沿いに広がる、明白色の硫黄石が散らばる一帯を捉えたクローズアップ画像(NASA/JPL-Caltech/MSSS)

Youtube上で見られる注釈付きのパノラマ画像をスクロールして、硫黄石を見つけてみよう。火星で純粋な硫黄が見つかったのは、これが初めてだった。
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翻訳=河原稔

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