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2024.11.18 15:30

未来を創る「妄想力」、付加価値型デベロッパー三井不動産の挑戦

植田 俊|三井不動産 代表取締役社長

「妄想、構想、実現」で新しい価値を

──デベロッパーとして、どうやって経済価値を生んでいくのか。
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植田:「失われた30年」は付加価値が正当に評価されず、サプライヤーをたたいたり、賃金を下げたりして利益を出す時代だった。しかしデフレ脱却により付加価値で優勝劣敗が起きる時代になる。カンブリア紀を彷彿とさせる時代の転換期だ。

私たちは24年4月に発表した長期経営方針「& INNOVATION 2030」で、「コア事業の更なる成長」「スポーツ・エンターテインメント等の新たなアセットクラスへの展開」「新事業領域の探索、事業機会獲得」という3つの道で付加価値をつくることを示した。今まさに、これらに取り組んでいる最中だ。

──付加価値を生んでいくには何が必要か。
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植田:「妄想、構想、実現」が重要だ。現在、日本橋をライフサイエンスの聖地にしようとブランディングしているが、きっかけは私の妄想だった。ビルディング本部副部長時代、オフィス街ではない練馬にビルを買ったアニメ会社があった。その理由は「練馬はアニメの聖地。いないと情報が入ってこない」。それを聞き、「江戸時代、薬問屋が並んだ日本橋はライフサイエンスの聖地になる」と夢が膨らんだ。

妄想に大義が加わると構想になり、応援してくれる人が現れる。新薬開発の世界は単独からオープンイノベーションへとシフトしており、関係者が集う場とコミュニティが求められていた。日本橋にそれらをつくる構想を描いていたら、サンフランシスコのシンポジウムから帰国する飛行機の中で、元慶応大医学部長の岡野栄之先生と知り合い、のちに一般社団法人「LINK-J」の理事長になっていただくことができた。

構想を実現へと移行するには、また別の筋肉と勇気が必要だ。「LINK-J」は現在、国内外で850社の会員がいて、ライフサイエンスビルも12拠点になった。資金を提供する投資家も引っ張ってきて、まさに聖地になりつつある。良質なコミュニティができたことで、私たちとしても新たな道が開けてくるだろう。

最初は独りよがりの妄想でもかまわない。わが社の社員たちにも、仕事を通じた自己実現で日本や世界に影響を与えるイノベーションを起こしてほしいと伝えている。


三井不動産◎1941年に三井合名会社不動産部門から分離・設立。「産業デベロッパーとして、社会の付加価値の創出に貢献」を目標に掲げる。国内外のグループ企業数は407社、従業員数は2,049名(いずれも2024年3月時点)。

植田 俊◎京都府生まれ。一橋大学経済学部を卒業後、三井不動産に入社。執行役員ビルディング本部副本部長、取締役常務ビルディング本部長、取締役専務を歴任し、日本橋街づくり推進部や日比谷街づくり推進部などを管掌。2023年4月より現職。

文=村上 敬 写真=ヤン・ブース

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