宇宙ステーションの開発は、いくつもの国や企業が協力しなければならない大事業だが、そこで重要になるのが情報やシステムの共通化だ。各メーカーが独自システムで競っていた黎明期のパソコンが、WindowsというOSの登場で一気に普及し、同時にインターネットの爆発的な発展を招いたように、国際宇宙ステーション引退後の民間宇宙ステーション開発の動きに向けて、OSで共通の開発基盤を整備しようと「Space Station OS」がオープンソースでリリースされた。
JAXAで国際宇宙ステーション日本実験棟「きぼう」の開発責任者だった長谷川義幸氏は、JAXAと日本の企業8社との共同開発でデータ共有に大変に苦労した。さらにNASAとのインターフェイス試験でも障害が多く、本来の技術開発とは別の労力とコストが大量に費やされたとのこと。「宇宙ステーションの基本的な機能を組み込んだSpace Station OSは、そのような余計な業務を効率化でき開発を加速できる可能性があります」と話している。
宇宙ステーションの管理に必要なソフトウェアを統合してモジュール化する。
Space Station OSを開発したのは、宇宙技術とデジタル技術の融合を目指すスペースデータ。ROSの最新版ROS2をベースに作られている。宇宙ロボティクスの専門家でありSpace Station OS開発者の加藤裕基氏は「宇宙ステーションは大きなロボットであり、スマートホームのようなもの」と語る。Space Station OSは宇宙ロボット技術の標準化で宇宙の民主化を実現し、民間宇宙ステーションや月面基地の開発などにも大きく貢献するものと期待される。
Space Station OSは、ソフトウェア開発者のための世界最大規模のソースコード共有サービスGitHubで公開されている。現在は第一歩となる「Phase 1」だが、2027年には実際の宇宙ステーション運用に対応した「Phase4」にまで発展させる予定だ。