テクノロジー

2024.05.14 13:15

「2035年に1兆8000億ドル」。宇宙経済は地球と未来の救世主になるか?

Andrei Armiagov / Shutterstock.com

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宇宙は地球の未来を救うのか──。世界各国が宇宙開発に熱視線を送るなか、4月10日に開かれた日米首脳会談ではアメリカが主導する「アルテミス計画」に日本人宇宙飛行士2人が参加することや、日本が有人月面探査車を提供・運用することなどで両国が合意した。

世界経済フォーラムが今月発表したレポートでは、宇宙経済(スペースエコノミー)は2035年には現在のおよそ3倍にあたる1兆8000億ドルに到達すると予測している。宇宙開発は地球の課題解決にどう貢献できるのか。今後、宇宙の恩恵に預かる産業はどこか。レポートの執筆をリードした世界経済フォーラムのニコライ・クリストフに話を聞いた。

──世界経済フォーラムのレポートでは、スペースエコノミーは世界で最も差し迫った社会的課題の多くに対処できる可能性があるとしています。

スペースエコノミーには2つの異なる重要なカテゴリーがある。ひとつはスペーステクノロジーだ。人工衛星や打ち上げロケット、全地球測位システム(GPS)など伝統的な宇宙事業が含まれる。

もうひとつがスペースエコノミーのリーチ(到達点)とされる領域だ。気象サービスや荷物の追跡、食品配達など、私たちの日常生活に密接にかかわる。この分野は35年に向けて大きく成長するだろう。

これらの成長を後押しするのが、デバイスを通じて業種間のデータ連携を確保する「通信」、サプライチェーンや輸送を支える「測位、航法、計時」、気象や自然災害などを監視する「地球観測」の技術だ。今後数年間でこれら3つの統合が進み、災害への対応などがよりスムーズになると期待される。

洪水を例に挙げよう。観測は、被害状況を監視するうえで重要な役割を果たす。だが、それだけではない。通信によって現地の緊急サービスに接続できれば地域住民に警告を発したりすることができる。AIなど他のテクノロジーと連携することで、災害が発生する前にさまざまな場所に情報を提供することも可能になるだろう。

──具体的に、スペーステクノロジーの進歩は宇宙産業以外の業種にどのような影響をもたらすのでしょうか。

35年にはサプライチェーンと輸送、食品と飲料、防衛、小売、消費財とライフスタイル、デジタル通信の6つの分野がスペースエコノミーの60%を占めると予測している。

たとえば、食品と飲料の分野ではGPSの精度が向上することで生鮮品のラストワンマイル配送の効率が上がるだろう。ウェアラブルデバイスを手がける企業は、消費者に一層充実したサービスを提供する機会を得ることができる。

スペーステクノロジーは保険業界にも利益をもたらすだろう。ここには2つの要素がある。ひとつは、天候や気候を予測しやすくなることでエリアごとにより適切な保険料を提示できるようになる点だ。もうひとつは、ロケットの打ち上げや衛星活動の一部を保障するサービスの拡大だ。今は比較的小規模だが、宇宙ゴミの除去や衛星への燃料補給など、スペースエコノミーが発展するにつれて宇宙関連の保険は大きく成長するだろう。
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文=瀬戸久美子 写真=世界経済フォーラム

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