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2024.11.13 15:30

ZOZO社長が明かす、コロナ禍で気づいた「社会的インパクト」

ただ、ZOZOが考える「いいこと」を声高に世に問うつもりはないという。

「大本にあるのは人です。能動的に発信するというより、社員一人ひとりがZOZOらしいことをしていければ、自然に良さがにじみ出ていくと思っています」

とはいえ組織が大きくなると、暗黙のうちに共有できていた「ZOZOらしさ」を言語化し、浸透させるプロセスが必要になる。そこでZOZOは20年に、ZOZOの企業風土やカルチャーを「ZOZOらしさ」としてあらためて言語化した。キーワードは3つ。「愛」「ソウゾウのナナメウエ」「日々進歩」だ。

「愛には、ファッションに対する愛もあれば、お客様や仲間、プロダクトへの愛も含まれます。ソウゾウのナナメウエは、奇をてらったナナメウエの発想も拒絶しないで面白がるということ。日々進歩は、スピード感は違っていいから自分なりに進歩をしていくという一人ひとりの働く姿勢を指しています。これらを備えたZOZOらしい人が私たちにとっての“いい人”であり、いい人がいい会社をつくりあげると考えています」

3つのキーワードのなかでも特に気になるのが「ソウゾウのナナメウエ」だ。コンサルタント出身の澤田はZOZOに転職後、ロジックでは届かない世界があることを何度も経験した。例えば創業者の前澤友作が始めた「ツケ払い」がそれだ。

「決済手段を増やしても、別の決済を利用していたお客様が新しい決済手段にシフトするだけで、新たに顧客数が増えるわけではない。これが従来のビジネスの常識でした。しかし、いざやってみたら若年層にメチャクチャ当たった。左脳だけではダメだと痛感しました」

そう語る澤田は「右脳派」の社員の存在価値の大きさを実感している。

「左脳派と右脳派が議論すれば右脳派がロジックで負けますが、数字を突き詰めた先にあるのは一般的なものばかり。心に刺さることをやろうとしたら、上の人間が右脳派も大切にしないといけません。私を含めて経営陣は左脳派が多いから、右脳集団と一緒にクリエイティブなことをしたりして感性を磨いています」

ちなみにマンガを活用した決算資料は、「ソウゾウのナナメウエAWARDS」という社内表彰制度でMVPを受賞した。世間でも話題になり、まねをする会社も現れ始めた。同社が体現する「いいこと」が社会に波及した一例だ。同社がZOZOらしさを失わないかぎり、今後も同様の事例が出てくるに違いない。


ZOZO◎1998年設立。「世界中をカッコよく、世界中に笑顔を。」を企業理念に掲げ、ファッションEC「ZOZOTOWN」、ファッションコーディネートアプリ「WEAR by ZOZO」をはじめ各種サービスの企画・開発・運営などを手がける。

澤田宏太郎◎早稲田大学理工学部工業経営学科を卒業後、NTTデータに入社。コンサルティング会社2社を経て2008年にスタートトゥデイコンサルティングを設立、代表取締役に就任。13年にスタートトゥデイ(現ZOZO)取締役。19年から現職。

文=村上 敬 写真=吉澤健太

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年12月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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