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2024.11.03 11:30

カタカナ語の壁:川村雄介の飛耳長目

森の主張をよそに、明治期の日本人は、外国語をいかに的確な日本語に置き換えるか、に大変な努力を傾けた。極めて創造的な知的作業であり、深い思考力と洞察力、そして彼我の圧倒的な差を見せつけていた欧米に対する自信を生み出したのではないか。
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また、カタカナ語の原語は多義的な場合が多い。例えば最近はやりの「エンゲージメント」も、投資家ー企業と会社ー従業員とでは意味が異なる。英和辞典でengagementを引くと「約束、予定、誓約、婚約、関与、従事、債務、交戦、連動…」とある。元来多義的な原語をカタカナにすると、往々にして曖昧だったり不正確だったり、場合によると誤っていたりしかねない。

カタカナ語には容易に日本語化しにくいものがあるのは事実だと思う。

会社の部署としてのDE&Iを直訳すると、多様性、公平、包摂、となるからこのままでは何の部を意味するかわからないだろう。しかし、だからこそこれをキチンと日本語に置き換える努力が大切なのではないか。頭をひねり、徹底的に調べて翻訳する作業を通じてこそ、欧米発の概念を自家薬籠中のものにできる。現状は単に横のものを縦にしているだけだ。それでは永遠に欧米の背中を見続けるばかりである。このまま失われた40年を見たくはない。今こそ、150年前の日本人の意気込みに学ぶべきだと痛感する。
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秋の夜長である。翻訳の才能などない私だが、以下のような経営方針を、すべて日本語で表現できないものか、じっくり考えていきたいと思っている。『プライム企業として、ステークホルダーに対してミッションとパーパスを掲げつつ、モニタリング・ボードたるガバナンスとスタッフへのエンゲージメントを確立する。イノベーションのスピアヘッドとしてカッティングエッジのテクノロジーを追求し、アジャイルな対応を通じてコーポレートバリューをアップさせる』


川村雄介◎一般社団法人 グローカル政策研究所 代表理事。1953年、神奈川県生まれ。長崎大学経済学部教授、大和総研副理事長を経て、現職。東京大学工学部アドバイザリー・ボードを兼務。

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