地域で世界で活躍するカルチャープレナーたち

登山地図GPSアプリで創業 テクノロジーで人と自然をつなぐ

春山慶彦|ヤマップ 代表取締役 CEO

「ITやスマホを活用して、自然や風土の豊かさを再発見する仕組みをつくりたい」と、2013年にヤマップを創業。登山地図GPSアプリ「YAMAP」をリリースした。最大の特徴は、オフラインでも現在地が一目でわかり、遭難や道迷い防止に役立つこと。
登山地図GPSアプリ「YAMAP」。 地図に山道が赤い線で表示される。オフラインでも使用可能。

登山地図GPSアプリ「YAMAP」。 地図に山道が赤い線で表示される。オフラインでも使用可能。

24年7月時点のダウンロード数は450万を超え、国内最大の登山・アウトドアプラットフォームとなった。21年にはユーザー同士の間で使われていたリアクションの「いいね」を、山の保全活動への支援に価値転換する「DOMO(ドーモ)」がスタート。22年には登山の新たな楽しみ方を提案する「山歩」プロジェクトや、山・川・街・海を含めた大地の広がりを視覚的に表現した3D地図「流域地図」の開発などを始動。テクノロジーを活用しながら人と自然をつなぐ機会をさまざまなかたちで発信している。目指すのは、人と地球環境がともに豊かになる世界の実現。

公務員から鍛冶職人へ転身 独自アイデアで被災地・能登を支える

干場健太朗|ふくべ鍛冶 4代目

石川県能登町にある老舗鍛冶店「ふくべ鍛冶」4代目店主。大学卒業後は能登町役場にUターン就職し、中小企業支援などの業務を担当していたが、2015年に母の病死を受け傾いた家業を立て直すべく職人の世界へ。
家庭で使う包丁から農具、漁具までを幅広くを手がける「野鍛冶」で能登の人々の暮らしを支えてきた。

家庭で使う包丁から農具、漁具までを幅広くを手がける「野鍛冶」で能登の人々の暮らしを支えてきた。

最短でも15年かかるといわれる専門技術の習得に励みつつ、コロナ禍のキャンプ需要にヒットした万能ナイフ「能登マキリ」や、切れなくなった包丁を箱に入れて送ると美しく磨がれて返送される包丁研ぎの宅配サービス「ポチスパ」など、独自のアイデアでヒットを生み事業拡大に成功。鍛冶屋として生き残ることで、漁師や海女が昔から愛用する専門性の高い道具も製造・修理が可能な砦となっている。年始の能登半島地震以降は、火災跡から掘り出された輪島塗職人の道具の優先的な修復活動や、ポチスパの受注管理システムを生かした伝統産業品の修理プラットフォーム「リペアクラウド」の立ち上げなど、さらに多方面で地域支援を行っている。

「彫刻の町」富山県井波町発分散型ホテルで職人技を再興

山川智嗣|コラレアルチザンジャパン代表取締役/建築家

2009年より中国・上海にある世界的建築家・馬清運氏の事務所でチーフデザイナーを務める。11年に上海で独立。日本での拠点を求めた際、専門技術をもつ職人があふれる土地柄や、門戸を広く継承されてきた井波彫刻の文化に魅了され、井波へ移住。16年に宿泊施設「Bed and Craft」をオープンする。宿泊者は、井波彫刻家のほか漆芸家や陶芸家など地元職人の指導のもと、木彫刻や漆器などの工芸品を自分でつくることができる体験サービスが受けられる「職人に弟子入りできる宿」として話題を呼ぶ。
チェックイン専用棟「BnC LOUNGE」には井波のディープな情報を得られるコンシェルジュ機能も併設。

チェックイン専用棟「BnC LOUNGE」には井波のディープな情報を得られるコンシェルジュ機能も併設。

17年には、伝統工芸の技術を生かした商品開発や施設運営を企画から請け負うデザイン事務所「コラレアルチザンジャパン」を設立。生活必需品を固定の職人に注文する「お抱え職人」の文化の再興をコンセプトに、人々の生活のなかで生きる「手仕事」の価値を再構築している。
次ページ > 「宿泊」そのものを豊かな経験に 光るアイデアでホテルの価値を更新

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年11月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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