食器からアートワークまで 感性を揺さぶる九谷焼作家
牟田陽日|九谷焼作家現代アートの名門として知られるロンドン大学ゴールドスミスカレッジでは映像やインスタレーションといった無形の現代アートを学ぶも、卒業後は一転して九谷焼という日本の「有形」伝統工芸に惹かれ、産地・石川県に移住。石川県立九谷焼技術研修所で2年間焼き物を学ぶ。
九谷焼の絵柄として多用されてきた動植物や神獣の絵柄、古典図案などを現代的にアレンジして落とし込んだ色鮮やかで躍動感あふれる個性的な作風にコラボの依頼が相次ぎ、これまでに宿泊施設の内装や高級醸造酒のラベル、スイーツのパッケージデザインなど、多方面へ九谷焼の絵付け技術を活用。日本の美感、工芸、アートの間を交信することを目標に行う果敢な創作活動が評価され、作品は国内で開催する個展では毎回抽選販売のうえ完売。イギリス・台湾・韓国・スイスなど海外のギャラリーでも作品が展示されるなどグローバルな人気を博している。
製造工程を紐解くSNS戦略で世界市場に日本工芸のファンを増やす
角居元成|水玄京 代表取締役社長高校~大学の7年に及ぶロンドンでの学生生活終了後、会社員としての経験を培うためBofA証券へ入社。幼少期から抱いた神社仏閣を修繕する宮大工への憧れを発端に、縮小していく日本の伝統工芸市場も自らの手で活性化させたいとの思いを温めて、2022年3月に「水玄京」を設立。
京都を中心に全国各地の職人と契約を結び、オンラインストアでの販売事業では京焼・清水焼、備前焼、江戸切子、尾張七宝、輪島塗など93種、2414のプロダクトを世界に向けて販売している。SNSでの販促活動を支援するコンサルティング事業では、職人の手による製品の製造工程を詳しく紹介した動画を水玄京の公式アカウントで公開。反響は大きく、すでに再生回数100万回を超えるものも多数ある。日本の伝統工芸の技術や製品はそのままに、SNSなど現代の機知を活用してより広く世界に発信し、その市場を支えようと試みている。
本質を極め、次代へ紡ぐ「茶の湯」から文化を革新し続ける茶人
伊住禮次朗|茶道総合資料館副館長/茶美会 主宰京都に続く茶道裏千家の分家である伊住家に次男として生まれる。茶名は宗禮。同志社大学を卒業後、京都造形芸術大学大学院にて茶の湯釜の研究で博士(学術)を取得。故父・伊住政和氏が「茶の湯を通して新しい美に出合う会」として始めた企画「茶美会」を継承し、2023年より主宰としてその活動を再開。現代アーティストとコラボする新しい茶のかたちを追求している。
茶人であると同時に茶道史や工芸史の研究者としても知られ、茶道総合資料館副館長、裏千家学園茶道専門学校副校長などを兼務。理事長を務めるNPO法人「和の学校」では、京都の伝統産業に生じる端材・余材を子どもたちの創造的な教育活動の素材として再活用するプロジェクト「つくものらぼ」を実施するなど、展開する活動は多岐にわたり、いずれにおいても形式の伝達に留まらない茶の湯文化の発展を目指している。